研究成果報告書 J94D0240.HTM

検索画面に戻る Go Research



(782Kb)

[D−2.海洋汚染物質の海洋生態系への取り込み、生物濃縮と物質循環に関する研究]

(4)イカ類肝臓の蓄積化学物質による全海洋環境監視計画に関する研究


[研究代表者]

水産庁 中央水産研究所  ●杉山元彦

[水産庁 遠洋水産研究所 外洋資源部]

遠洋底魚研究室

●川原重幸、余川浩太郎

外洋いか研究室

●早瀬茂雄、谷津明彦、田中博之、松山尺彦、梅津武司(現南西海区水産研究所)

[水産庁 中央水産研究所環境保全部]

●杉山元彦

生理障害研究室

●角埜 彰

水質化学研究室

●山田 久、高柳和史

[環境庁 国立環境研究所 化学環境部]

●森田昌敏

計測管理研究室

●吉永 淳

動態化学研究室

●柴田康行

[水産庁 中央水産研究所環境保全部]

生物検定研究室

●小山次朗

(委託先)

[東京水産大学 水産学部]

水産動物研究室

●奥谷喬司、瀬川 進


[平成3〜6年度合計予算額]

68,537千円(平成6年度予算額 18,236千円)


[要旨]

 広範な海からの海水の採取と分析には多くの困難が伴う。そこで生物濃縮に着目し、世界の海から漁獲されるイカの肝臓を用いて海の汚染モニタリングを試みる。イカ肝臓には沿岸性ムラサキイガイ軟体部よりはるかに高濃度の汚染物質が濃縮される。これによりムラサキイガイでは把握できない大洋の汚染状況をより容易に知りうる。
 イカ類は一年生であるので、その肝臓の汚染物質濃度は年毎の海の汚染状況を反映する。はじめにスルメイカ・アカイカ、外国産主要種の生活史をまとめた。日本近海・両半球の約30種イカ肝臓中の有機スズ化合物(TBT・TPT)、PCBs、人工放射性核種(60Co、108mAg、239+240Pu、238Pu)、重金属、多環芳香族炭化水素〔(PAH)(Benzo(k)F1uoranthene、Benzo(a)Pyrene、Benzo(ghi)Pery1ene)〕を定量した。その結果、北半球、特に日本近海で汚染が進んでいること、南半球で比較的汚染が少ないことが明きらかになった。TBT、PCBs、Coの海水中から肝臓への濃縮率は104-5、Agは107と試算された。PAHついては単純に濃縮率を見積れず、なお若干の検討を要する。広範囲に分布するスルメイカ類は世界の大洋の汚染モニタリングに適種であり、本研究によりモニタリング方式の基本は確立できた。


[キーワード]

イカ肝臓、有機スズ化合物、PCBs、PAH、人工放射性核種、重金属