研究成果報告書 J93D0420.HTM

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[D−4 ペルシャ湾岸の原油汚染等が海洋環境に及ぼす影響の評価に関する研究]

(2)原油水溶性画分が海洋生態系の構成生物に及ぼす毒性の評価に関する研究


[研究代表者]

中央水産研究所  ●黒島良介

水産庁 中央水産研究所

環境保全部 生物検定研究室

●黒島良介

水産庁 養殖研究所

環境管理部 環境動態研究室

●杉山元彦(平成3年度のみ)


[平成3年度〜5年度合計予算額]

13,166千円

(平成5年度予算額 3,130千円)


[要旨]

 原油水溶性画分の魚類などに対する毒性影響は生理・生化学、形態異常、病理組織、習性・行動などの多岐にわたり及ぼされることが知られている。原油水溶性画分中の大部分の成分は比較的容易に蒸散により水中から消失するが、一過性の強いインパクトがその後の生物に及ぼす影響についてはほとんど明らかにされていない。また、原油水溶性画分にはジベンゾチオフェンのように毒性が強く、長く水中に残留する傾向を示す成分が含まれる。したがって、原油流出事故が海洋生物に及ぼす影響は原油流出そのものが止まった後も長期的に続く恐れがあり、各生物種に対する毒性影響の比較検討を含め、原油流出事故に対する対応策を確立するための基礎的研究を進めていく必要がある。
 本研究ではまずはじめに、クウェート原油水溶性画分の主要成分の消長を明らかにし、ナフタレン類などの多環芳香族化合物はその毒性、残留性の点から特に注意を要する物質であること及び抽出直後のクウェート原油水溶性画分は海産魚類や甲殻類に対して非常に強い毒性を発揮することを示した。次に、マダイとクルマエビに対するベンゼン、トルエン、及びナフタレンの24時間半数致死濃度を明らかにし、これらの成分は海産生物に対して非常に強い急性毒性を持つことを示した。しかし、これらの低沸点成分は原油除去後比較的速やかに海水中から消滅するが、ジベンゾチオフェンなどの高沸点有機硫黄化合物は原油除去後も長期間残留することを明らかにした。さらに、ジベンゾチオフェンのマダイ及びクルマエビに対する急性毒性値を調べた結果、これらの値は既報の淡水ヒメダカに対する値より著しく低いことが分かった。また、海水中に溶存するジベンゾチオフェンはマダイやクルマエビの体内に蓄積・濃縮されることを明らかにした。これらの結果から原油流出事故後長期間にわたり、ジベンゾチオフェンなどの高沸点有機硫黄化合物による海洋生物への影響が懸念されることを指摘した。


[キーワード]

原油水溶性画分、海産生物、低沸点成分、高沸点有機硫黄化合物、残留