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[C−3 酸性降下物の陸水・土壌への影響機構に関する研究]

(3)酸性降下物の水生生物に及ぼす影響に関する基礎的研究


[研究代表者]

 

中央水産研究所

●西村定一

[農林水産省 水産庁 中央水産研究所]

 

内水面利用部 魚類生態研究室

●東井純一、井口恵一朗

          漁場環境研究室

●西村定一、伊藤時夫、伊藤文成、山口元吉

漁場管理研究室

●木曽克裕、岡田行親

[農林水産省 水産庁 養殖研究所]

日光支所 繁殖研究室

●北村章二、生田和正

       育種研究室

●岩田宗彦


[平成2〜4年度合計予算額]

34,239千円


[要旨]

 酸性環境と水生植物、温水性・冷水性魚類、及び水生昆虫等の餌生物のこれに対する応答、重金属との複合作用、耐酸性等について研究を行った。主要な結果は以下の通りである。水生植物にpH緩衝能が認めらた。コイによるpHとAl濃度の組合せ実験で、低温(10℃)と高温(25℃)では斃死は殆どなく、中間の温度(14と18℃)では斃死が生じ、低pHとAlの毒性は温度の影響を受けること、孵化稚魚は卵より弱く、卵には致死的でない水温22〜26℃で硬度70ppmCaCO3の井戸水によるpH5.2・Al0.2ppm・5日間の条件で致死的影響を受けること、飼育水の硬度を5,25,50,100ppmCaCO3と変えた実験では低pHとAlの致死毒性は硬度が低い程強くなるが、25ppmCaCO3でも致死毒性が強いことが明らかになった。サクラマスによる実験で硫酸酸性環境による鰓浸透圧調節機能に対する障害はH+が主要因であり、硝酸、塩酸でも同様であること、ベニサケ稚魚への24時間の酸性環境暴露(pH5.0)で、血清Na濃度の低下は降海期中のものにのみ見られ、この時期のみが酸性環境暴露に特に弱いことが明らかになった。アユ、イワナ等の精子活性へのCu、Alと低pHの複合作用が見られ、花崗岩、安山岩からの酸性水中へのAlの溶出はpH5までは顕著でないが、pH4.5以下で顕著となり、4.0では15日で4.44ppmとなり、精子活性に影響する濃度より100倍以上高濃度になった。アユ、ワカサギ等の受精卵はpH5.3以上では発生が進行し孵化に至るが、4〜5では発眼以後斃死した。6魚種の仔稚魚の耐酸性はワカサギ>モツゴ>ウグイ>フナ≒コイ>アユの順と判断され、ミジンコ、ワムシは魚類と大差ないがユスリカは養い耐酸性を示した。pH5.5の水を注水し続けた水量1.2tの水槽は14週後にpH6.4であったが、対照モツゴの体重は増大したがこの区のそれは減少し、弱酸性環境でも生態系に悪影響が生じる可能性が示された。サケ・マス類6魚種の孵化稚魚の24hrLC50pHは4.1〜3.6で、ヒメマスが最も弱く、ブラウンマスが最も強かった。ニジマス雌親魚の酸性水飼育(pH4.5・2週間)は発眼率の低下と奇形率の上昇をもたらして次世代へ悪影響を与え、水生昆虫の耐酸性はコカゲロウでは魚類より低かったが、カワゲラ、トビゲラ等は魚類より高かった。


[キーワード]

 酸性雨、淡水生物、浸透圧、金属溶出、アルミニウム、モデル生態系