検索画面に戻る Go Research



(366Kb)

[C−3.酸性降下物の陸水・土壌への影響機構に関する研究]

(1)日本における集水域の酸性化予測と陸水・土壌生態系への影響に関する研究


[研究代表者]

 

国立環境研究所

●河合崇欣

[環境庁 国立環境研究所]

 

地球環境研究グループ 酸性雨チーム

●河合崇欣

               温暖化現象解明チーム

●野尻幸宏

化学環境部 動態化学研究室

●田中 敦

水土壌圏環境部 土壌環境研究室

●高松武次郎

           環境管理研究室

●海老瀬潜一

生物圏環境部 陸生生物研究室

●岩熊敏夫、多田 満

(委託先)
信州大学理学部


●林 秀剛

名古屋大学水圏科研

●坂本 充、寺井久慈

       農学部

●肘井直樹

京都大学農学部

●渡辺弘之

茨城大学理学部

●田村 浩

島根大学農学部

●金井信博

北海道環境科学研

●坂田康一


[平成2〜4年度合計予算額]

61,615千円


[要旨]

 環境庁の第1次酸性雨調査で、日本でも都市の近辺では欧米の被害顕在化地域と同程度の酸性降下物量が観測された。これを受けて、日本の集水域の緩衝作用の特徴を示すことと、今後の東アジア地域の経済発展に伴う酸性及び酸化性物質の国内への負荷量の増加の可能性などを考慮して、日本の緩衝能最弱点を絞り出すことを目標に、酸性岩を主たる母岩とする7つの変成帯に流域を持つ珂川・湖沼の水質をアルカリ度を主たる指標として調査・研究した。
 関連して、緩衝能の定量的評価のための手法の開発とともに、地質的な緩衝作用の恩恵を受け難く、影響が出ている可能性があるにもかかわらず、目に触れる機会が非常に少ないため情報が限られている、土壌動物への影響に関する文献調査も行った。以下のような結果が得られた。
1.国内7つの変成帯に流域を持つ河川・湖沼のアルカリ度は、調査を行ったほとんどのところで100μeq/1以上あり、流域のアルカリ度生成の機構を考慮すると、現在程度の酸性降下物量では、日本の河川・湖沼水が酸性化する可能性は将来ともほとんど無い。
2.但し、飛騨変成帯にある山上湖(双六池、鷲羽池)では集水域の緩衝能が殆ど無く、降水の僅かな酸性化も湖水のpH低下につながることが判った。また、北海道美唄にある東明池に流入する小河川で自動連続測定法を用いて、1992年春に融雪期pH低下を観測した。しかし、その後は同様の観測例はない。薄い表層土壌の下に粘土質不透水層が広がっているため集水域土壌緩衝能が小さくなる例である。実測で酸性化(負のアルカリ度)が把握されたのは、極限定されたこの2つのみであった。美唄については1度だけで、その後は酸性化することがなかった。
3.酸性化予測(流域の緩衝能低下監視)の最も基本的な指標項目であるアルカリ度の高精度測定法として、Gran’s Plot法を改善し、半自動化した。
4.酸性降下物の土壌動物への影響に関する文献調査を行い、実態についての報告を整理すると共に、評価の土台となっている調査・測定法の検討を行い、報告書にまとめた。


[キーワード]

 酸性雨、陸水、緩衝能、変成帯、酸性化予測、アルカリ度