研究成果報告書 J92B1030.HTM

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[B−10.地球の温暖化による海水面上昇等の影響予測に関する研究]

(3)古環境解析による地球温暖化に伴う沿岸環境の影響評価に関する研究


[研究代表者]

 

地質調査所

●大嶋和雄

[通商産業省 工業技術院地質調査所]

(現在:茨城大学)

●大嶋和雄

北海道支所応用地質課

●池田国昭、羽坂俊一

文部省 名古屋大学 水圏科学研究所

●松本英二

北海道開拓記念館 文化交流課

●赤松守雄


[平成2〜4年度合計予算額]

28,055千円


[要旨]

 流氷漂着の南限である北海道オホーツク海沿岸は、約5千年前の縄文海進期には暖海性貝類の繁殖する環境にあった。過去1万年間に、この沿岸環境がどのように変化してきたかを解明することは、50〜100年先の海面変動の影響を予測する上での先決課題の一つとなっている(IGBPのPAGES2)5)12))。
 世界各地の沿岸地形と同様に、野付崎やサロマ湖も最終氷期以降の海水準変動過程で形成されてきたものである。オホーツク海沿岸の地形発達史は、古くから注目されてきたが、海底地形や沿岸地質調査などの具体的資料なしに展開されてきたため混乱していた。今回、この地域としては初めての本格的なボーリングによる地質調査が実施されると共に、それら採取試料の分析値を、日本列島の海水準変動曲線(ohshima、1992)15)と比較する事によって、完新世における野付崎およびサロマ湖の沿岸地形発達を2000年間隔で復元した。
 野付崎は従来考えられていたような、縄文海進後に堆積した砂州ではなく、国後島と北海道とを結ぶ台地が、約5千年に浸食されてできた地形である。野付崎を境にして、岩魚の仲間のイワナ(白斑型)とオショロコマ(赤斑型)の分布を分けている事が、根室海峡の形成(その後に野付崎形成)の新しいことを裏付けている。サロマ湖とオホーツク海とを分断する砂州上のボーリング調査によって、砂州の本体は野付崎と同様に更新統からなる事が証明された。沿岸地形および自然貝殻層の構成貝から、本沿岸に流氷が漂着するようになったのは、根室海峡形成後と推定された。また、縄文海進期の温暖化は夏よりも冬の方がより大きかった事が、貝類の生息環境条件から評価できた。そして、オホーツク海の沿岸環境は、単に気候変動や海面変動に支配されるというよりも、宗谷、間宮および根室海峡などの形成に伴う沿岸流の流況変化の影響が大きなものと仮定できる。この仮定を検証するためには、完新世における日本海の対馬暖流の消長を解明しなければならない。


[キーワード]

完新世、海水準変動、サロマ湖、野付崎、PAGES