研究成果報告書 J92B0630.HTM

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[B−6.陸上生態系における炭素循環機構の解明に関する研究]

(3)暖温帯森林生態系における炭素循環系の定量的解析に関する研究


[研究代表者]

 

広島大学総合科学部

●中根周歩

[広島大学総合科学部 自然環境研究講座]

環境生態学研究室

●中根周歩、安橋恒明、河野貴宏

微生物学研究室

●堀越孝雄、井上尚子、三島慎一郎


[平成2〜4年度合計予算額]

10,469千円


[要旨]

 暖温帯落葉広葉樹林において、土壌炭素のフロー(落葉枝速度、分解速度など)とリザーバー(A0層量、土壌腐植量など)を年間を通して測定し、それら季節変動を把握するとともに、年間量の循環をコンパートメントモデルで解析した。その結果、その循環速度、循環量は暖温帯常緑広葉樹林と冷温帯落葉樹林のほぼ中間の値を示すことが明らかとなった。また、伐採直後の循環量は大きく低下するが、ただ土壌腐植の分解は土壌温度の上昇によって促進される傾向が見られた。また、伐採前の炭素収支はほぼ均衡していたが、伐採後は大きくマイナスとなりCO2のソースとなった。伐採前の成熟した林分の根の呼吸速度は、全土壌呼吸速度の約50%であることが確認された。土壌炭素循環のシミュレーションモデルを構成し、その季節変動、伐採から再生に至る循環、収支動態を予測した。季節変動は他の温帯林でのそれとよく類似していた。伐採から森林再生に至る過程での土壌炭素の循環動態を解析したところは、伐採直後A0層量は急激に減少し、約10年後最小となり、その後回復し、伐採後40〜50年でほぼ伐採前の状態にもどった。一方、土壌炭素量は伐採初期にやや増大し、その後30〜40年にわたって減少が続き、もとの蓄積量にもどるのは80〜100年を要することがわかった。一方、伐採から森林再生過程における炭素収支は、伐採直後大きくマイナスとなるが、伐採後ほぼ11年で収支はプラスへと転換し、約20年で失った炭素を取り戻した。さらに、70〜80年後には伐採によって持ち出された材が蓄積していた炭素量をも回復することが推定できた。この温帯林のCO2のシンクの可能性とそのシンク量の評価を試みたところ、過去30年間で土壌炭素総量は約8%、すなわち約9tC ha-1の増加となっていることが判明した。同様なことが各種タイプの森林でも予測できたことから、陸上生態系によるグローバルなシンク量を推定したところ、57X109tC30y-1(1.9X109tCy-1)となり、ミッシングシンクの約半分を陸上生態系が担っていることが推測された。


[キーワード]

暖温帯落葉広葉樹林、炭素循環、炭素収支、シミュレーション、CO2シンク


[リンク]J92B0630.pdf