研究成果報告書 J92B0530.HTM

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[B−5.海洋における炭素の循環と固定に関する研究]

(3)海洋堆積粒子形成過程とそれに伴う炭素の挙動に関する研究


[研究代表者]

工業技術院 地質調査所

●川幡穂高

[通商産業省 工業技術院]

地質調査所

 

 

海洋地質部

 

●盛谷智之、中尾征三

 

海洋鉱物資源課

●川幡穂高、山室真澄

 

海洋底質課

●茅根 創、田中裕一郎、鈴木 淳

地殻化学部

地球化学課

●三田直樹


[平成2〜4年度合計予算額]

27,083千円


[要旨]

 アミノ酸は生体物質として最も重要なものの一つで、特に窒素化合物として極めて重要な位置を占めている。そして、沈降粒子から堆積粒子への過程である続成作用中に、間隙水中に溶出したさまざまな炭素化合物は表層堆積物層を移動して、再び海洋に戻っていく。アミノ酸は炭素循環にとってリザーバー内の主要な成分であるとともに、物質輸送のトレーサーの役目もしている。しかしながら、現在のところ、間隙水中のアミノ酸の濃度や組成を調べた研究はほとんどなく、そのリザーバー内の量が評価されたこともなかったので、今回研究の第1歩として、生物生産量が高い南極海、赤道湧昇帯、半遠洋性の地点を選び、間隙水中のアミノ酸を分析した。その結果、溶存結合性のアミノ酸は堆積粒子の生物起源の主要成分によって大いに影響を受けること、溶存結合性アミノ酸と溶存遊雛性アミノ酸との比較により、溶存性アミノ酸の反応性は溶存結合性アミノ酸と堆積粒子に含まれる結合性アミノ酸との相互作用よりずっと速い微生物反応や生物化学反応によって支配されていること、特に酸性アミノ酸で顕著なように、無機炭素化合物の代表している方解石(炭酸カルシウム)と反応していることが示唆された。しかしながら、当初予想された、硫酸還元、メタン発酵等の微生物活動のタイプとアミノ酸の組成および濃度との関連は明らかな証拠を見いだすことはできなかった。太平洋、大西洋、インド洋における4地域の堆積物の間隙水中のアミノ酸の平均値は、DFAA総量で4.95μmol/L,DCAAで6.16μmol/Lであった。これらの結果は、海水中のアミノ酸濃度より2〜3桁位高く、間隙水中の主要な窒素を含む溶存有機物であるアミノ酸に関して、海洋の間隙水は非常に大きなリザーバーであることが初めて明らかとなった。


[キーワード]

間隙水、アミノ酸、堆積粒子、有機物、珊瑚礁