研究成果報告書 J92B0520.HTM

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[B−5.海洋における炭素の循環と固定に関する研究]

(2)海洋沈降粒子による炭素の沈降フラックスに関する研究


[研究代表者]

 

国立環境研究所

●野尻幸宏

[環境庁 国立環境研究所]

 

地球環境研究グループ 温暖化現象解明研究チーム

●野尻幸宏、斉藤千鶴(科学技術特別研究員)

(委託先)

 

東京大学海洋研究所

●野崎義行

名古屋大学大気水圏科学研究所

●半田暢彦


[平成2〜4年度合計予算額]

52,373千円


[要旨]

 表層海洋から深層海洋への正味の炭素のフラックスを明らかにするために、セディメントトラップ実験を行った。伊豆小笠原海溝における係留実験からは、陸起源物質の外洋への輸送過程と、粒子の沈降過程における変質を明らかにする研究を行った。
 海洋沈降粒子の鉛直フラックスは、海洋表層で生物生産された有機物、炭酸カルシウム、ケイ酸などを主成分とする比較的大型の粒子に実質的に支配される。ただし、海溝域では陸起源の粘土鉱物の寄与、マンガンの溶存態から粒子態への移行、海溝斜面に由来する再懸濁粒子の寄与なども合わせて観測された、また、海溝深部(5000m以深)では、炭酸殻の沈降量の急激な減少が認められた。この結果は、実際の炭酸殻を海洋深部に係留して行った溶解実験で、カルサイトとアラゴナイトの2種類の炭酸殻が1年間で完全溶解した結果と整合的であった。
 海洋沈降粒子の有機炭素の起源に関する研究を、主に放射性炭素による有機炭素の年齢の解析から行った。日本近海の海溝域のセディメントトラップ実験によって得た沈降粒子と、その海域の懸濁粒子の有機炭素の年齢を測定した。その結果、中層、深層の懸濁粒子が著しく古く、沈降粒子は表層の新生有機物と懸濁粒子の中程度の年齢であった。このことは、海溝域の有機物の輸送が斜面域の堆積粒子の再懸濁と、引き続いて起こる粒子の水平方向の輸送の寄与があることを意味する。そして、沈降粒子は海溝域の中深層で懸濁粒子を取り込みながら、沈降してゆく状況が明らかにされた。


[キーワード]

海洋、セディメントトラップ実験、海洋沈降粒子、有機炭素、フラックス