研究成果報告書 J92A0540.HTM

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[A−5.紫外線の増加が植物に及ぼす影響に関する研究]

(4)紫外線の植物への影響の作用機構に関する研究


[研究代表者]

 

国立環境研究所

●近藤矩朗

[環境庁 国立環境研究所]

 

地域環境研究グループ 新生生物評価研究チーム

●近藤矩朗、佐治 光

生物圏環境部 環境植物研究室

●大政謙次、清水英幸


[平成2〜4年度合計予算額]

32,969千円


[要旨]

 オゾン層破壊により増加するUV−Bの植物への影響の作用機構を検討するために、キュウリの芽生えを用いてUV−B照射の室内実験を行った。UV−Bはキュウリの第一葉の成長を阻害し、葉面に可視障害を生じた。成長阻害の程度は1日あたりのUV照射時間に影響されず、ほぼ一定であった。UV−Bによる成長阻害の作用スペクトルを得るために、第一葉が展開を始めた時期に、大型スペクトログラフを用いて280nmから320nmの範囲で10nm間隔で単色光紫外線照射を行い、波長ごとの影響の程度を比較した。照射時間は一日4時間とし、その前後は4時間ずつ白色光を照射し、3日間照射を繰り返した。第一葉の成長は280、290、300nmの単色光により顕著に抑制され、これらの単色光の強度が高い場合には葉に顕著な障害は生じ、3日後には萎れた。各波長毎の光強度と成長阻害率との関係から、25%成長阻害の作用スペクトルが得られた。280と290nmの紫外線は他の波長と比べて強い成長阻害効果を有し、320nmでは阻害効果は認められなかった。単色光紫外線照射と同時に可視光を照射したところ、300nmによる成長阻害は軽減されたが、290nmによる阻害は回復しなかった。これらの結果は、オゾン層破壊により著しく増加すると予測されている290〜300nmの紫外線は強い成長阻害効果を有しており、紫外線と同時に強い可視光が照射される自然環境においても強く阻害される可能性があることが明らかになった。


[キーワード]

 可視障害、キュウリ芽生え、作用スペクトル、成長阻害