研究成果報告書 J92A0510.HTM

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[A−5.紫外線の増加が植物に及ぼす影響に関する研究]

(1)紫外線増加が農作物に及ぼす影響の評価に関する研究


[研究代表者]

 

農業環境技術研究所

●野内 勇

[農業環境技術研究所]

 

環境資源部 大気保全研究室

●野内 勇、小林和彦、細野達夫


[平成2〜4年度合計予算額]

30,369千円


[要旨]

 紫外線、特にUV−B(280−320nm)の農作物への影響を調べるため、紫外線ランプによる紫外線照射実験を行った。平成2〜3年度は自然光利用のガラス製人工気象室内で、キュウリ、ハツカダイコン、チンゲンサイを用いて3〜4週間のUV−B照射実験(紫外線強度は0,244,381mWm-2UV−BBEの3段階)を行い、その生長影響を検討した。なお、この照射実験では、紫外線ランプ器具が植物の真上にあり、その遮蔽で直達光がほとんどなく、日射量が自然状態に比べ1/2から1/3と非常に少ない状態であった。また、つくば市(北緯36度)における夏至の快晴日正午におけるUV−BBEは、約200mWm-2であった。照射実験の結果、キュウリとチンゲンサイはUV−Bに対し感受性が高かったが、ハツカダイコンは何らの影響も受けなかった。キュウリはUV−Bにより生長が大きく阻害されたが、この生長阻害が認められた場合は秋から冬にかけての実験の場合であった。夏季の実験ではその生長阻害はほとんどなっかた。このことは、UV−Bの植物に対する影響がUV−B量と可視光量とのバランスによって大きく変化することが考えられた。すなわち、人工気象室内のUV−B照射実験では、可視光が少ないため、UV−Bによる生長阻害が生じやすく、農作物の生長や収量に及ぼすUV−Bの影響を正しく評価することはできないと判断した。平成4年度は、野外におけるUV−Bの農作物への影響を評価するために、太陽紫外線強度に追随し、太陽紫外線に対し常に一定の割合でUV−Bを増加させる調光型フィールドUV−B照射装置を制作した。そして、自然光下における世界の代表的水稲17品種を用いてUV−B照射実験(50%増加)を行った。その結果、供試した17品種すべて、葉面積、草丈、分げつ数、穂重および個体乾物重などの生長パラメータUV−Bの影響をほとんど受けなかった。この野外でのUV−B照射実験の結果は、UV−Bの植物への影響が当初考えられていた程は、強い影響を及ぼしていないことを示唆するものである。


[キーワード]

 紫外線、UV−B、農作物、生長、バイオマス