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[キーワード]水銀、生物増幅、食物網、やんばる、元素動態
[RF-085 やんばる生態系をモデルとした水銀の生物蓄積に関する研究]
(3)生態系の水銀動態に関する解析
[PDF](989KB)
東京農工大学 大学院
  共生科学技術研究院 環境毒性学研究室
渡邉 泉
<研究協力者>
環境省 那覇自然環境事務所
  野生生物課
阿部愼太郎
独立行政法人国立環境研究所
  生物資源研究室
桑名 貴
琉球大学 農学部
  生産環境学科 亜熱帯動物学講座
小倉 剛
琉球大学 教育学部
  自然環境科学教育コース
本多 正尚
[平成20年度合計予算額] 3,900千円
[要旨]
本研究で分析されたジャワマングースの肝臓の水銀最高濃度は300μg/g(乾重あたり:以下DW)を超えた。やんばる生態系の栄養段階が低次の生物の水銀レベルは平均で0.66μg/g DW、分析された無脊椎動物の最高濃度はムカデ類の1.9μg/g DWであった。両生類では、とくにイボイモリで他両生類に比較して顕著に高い水銀レベルが認められた。分析された爬虫類は、栄養段階がマングースと同様に高い種が含まれたが、顕著な高値はみられなかった。鳥類においては魚食性でない山林生の希少種ノグチゲラ、ヤンバルクイナ、アマミヤマシギ、アカヒゲの筋肉や肝臓に比較的高レベルの水銀とセレンが検出された。哺乳類は、分析された希少種に、鳥類のような高濃度は確認されなかった。また、やんばる地域における沿岸生魚類イソフエフキの筋肉から0。27~0.49μg/g DWの濃度が検出された。以上の結果から、やんばる生態系に存在する水銀レベルは、比較的高めであることが示唆され、ジャワマングースの水銀濃縮に、イボイモリやヤンバルクイナ、ヤマシギなど山林生の希少種であり、かつ水銀濃度の高い種が寄与している可能性が示された。微量元素25種との関係で、水銀は鉛やカドミウム、銀など強毒性元素にくわえ、セレンやクロム、バナジウム、ニッケル、コバルトといった元素とも連動して動いている可能性が示唆された。水銀解毒に関与するセレンや、汚染元素カドミウム、クロムさらにストロンチウムは高次になるほど水銀と連動した蓄積がみられ、鉛、銀、コバルトそしてニッケルなどは低次の生物で水銀と連動した。バナジウムは、高次、低次通じて水銀と強い相関関係を示した。
  マングースから排出される水銀の検討を行った。その結果、毛からの排出能は低いことが明らかになった。さらに、1検体のみの結果であるが、比較的高濃度の水銀を蓄積したメスの胎児において比較的高濃度の水銀が移行されていることが示された。このことから本種において水銀のハイリスク・グループである胎児期に、水銀による生体影響が発現する可能性が示唆された。