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[キーワード]マングース,初代細胞培養技術,肝細胞,水銀,組織学的検索

[RF-085 やんばる生態系をモデルとした水銀の生物蓄積に関する研究]

(2)野生動物の初代肝細胞培養系の確立[PDF](1,660KB)

  琉球大学 医学部
  地域環境医科学講座 医科遺伝学分野


柳 久美子

<研究協力者>

 

  環境省  那覇自然環境事務所
  野生生物課


阿部愼太郎

  愛媛大学
  沿岸環境科学研究センター


宝来佐和子

  琉球大学 医学部
  地域環境医科学講座 医科遺伝学分野


要 匡

  琉球大学 農学部
  生産環境学科 亜熱帯動物学講座


小倉 剛

  [平成20年度合計予算額] 2,600千円

[要旨]

  マングース肝組織から、肝細胞の分離法、培養の至適条件を決め、初代肝細胞培養技術を確立した。マングース初代肝細胞の至適培地はWilliams’ medium E培地であった。マングース肝細胞の初代培養に成功したのは我々をおいて他にない。培養された初代肝細胞は形態学的に生体内肝細胞と類似していることが確認され、本技術は水銀代謝機構を実験的に検証する上で重要かつ強力なツールとなりうる。
  マングース主要臓器(肺、肝、腎、副腎、脾、リンパ節、唾液腺)の詳細な病理組織学的検索を行うために、ヘマトキシリン-エオジン染色、コッサ渡銀染色、ベルリンブルー染色、PAS染色標本を作製し顕微鏡にて観察した。本解析により、複数個体の肝(小葉内、小葉間結合組織)、腎(腎盂粘膜、近位尿細管)に組織障害を伴う炎症性変化がみられることが判明した。さらに、水銀の局在を組織学的に検出する方法としてAMG (Autometallography)法を用いたプロトコールを確立し、マングース主要組織での水銀検出に成功した。これらの結果は臓器ホモジネートを用いた微量元素分析結果と照合して妥当な結果であった。水銀の局在は、肝臓では血液の流れに沿って蓄積していく傾向(小葉中心性)が顕らかであり、腎では物質の再吸収に関与する近位尿細管に認められた。これらの結果は水銀代謝が行われているまさに“現場”を捉えたものであり、水銀蓄積・代謝機構解明へのストラテジー立案に貢献するものである。また、AMG法は検索対象の種を問わない。則ち、本手法はマングースに限ったものではなく、水銀の高濃度蓄積が報告されている他の動物(海鳥類、クジラ等)などでも水銀の組織内局在を検出することが可能であり、他分野の研究への応用が期待できる。