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[キーワード]マングース、水銀、重金属毒性試験、重金属代謝機構、遺伝子発現変化

[RF-085 やんばる生態系をモデルとした水銀の生物蓄積に関する研究]

(1)水銀代謝機構の解析[PDF](709KB)

  鹿児島大学
  大学院医歯学総合研究科
  分子腫瘍学分野


山本 雅達

<研究協力者>

 

  環境省 那覇自然環境事務所
  野生生物課


阿部愼太郎

  愛媛大学
  沿岸環境科学研究センター


宝来佐和子

  琉球大学 医学部
  地域環境医科学講座
  医科遺伝学分野


要 匡

  琉球大学 農学部
  生産環境学科
  亜熱帯動物学講座


小倉 剛

  [平成20年度合計予算額] 2,600千円

[要旨]

  マングースは肝臓において水銀(Hg)を高濃度に蓄積する唯一の陸生ほ乳類と考えられ、これまで未解明であった水銀耐性を示す生物種の、水銀蓄積や解毒機構を解明するモデルとして有用である。このことから我々は捕獲されたマングースの初代培養肝細胞を用いて重金属感受性試験を試みた。その結果、メチル水銀についてはマングースのIC50値の5.04μMに対して、ラットでは9.02μM、また、塩化水銀に対する感受性は22.1μMに対してラット61.6μM、さらにセレンに対する感受性は67.2μMに対して153μMといずれもラットに対する値より低く、予想に反して、マングースの初代培養肝細胞はラットのそれよりこれらの重金属に対して感受性が高いという結果が得られた。しかしながら今年度行なった重金属感受性試験に用いた検体は、これまでに測定した生前の水銀蓄積が低い個体であり、これについては水銀蓄積の高い個体について水銀暴露実験を行なう必要があると考えている。
  一方で、我々は水銀解毒機構・責任分子の解明を目的として、チオレドキシンの関連蛋白質とその代謝酵素、グルタチオンの代謝酵素と関連蛋白質、メタロチオネインの代謝酵素など、多くの生物種で金属やレドックス代謝に関連する分子について、マングースの各遺伝子のPCRプライマーセットの作製を行なった。今回チオレドキシンレダクターゼ2遺伝子について、既知であるイヌ・ネコのcDNA情報をもとに相同性が高い領域、そしてヒトのゲノムおよびcDNA情報から短いイントロンを挟む形でプライマーセットを作製した。これを用いてングース繊維芽細胞のゲノムおよび繊維芽細胞、卵巣、精巣のcDNAを鋳型としてPCRを行なったところ、いずれもマングースのチオレドキシンレダクターゼ2として予想されるサイズのフラグメントが検出された。今後、マングースのチオレドキシンレダクターゼ2遺伝子やその他の遺伝子の発現変化を順次解析を行なうことで、これらから得られる知見はマングースの水銀解毒機構・責任分子の解明に貢献できると考える。