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[キーワード]バイオ燃料、貿易、Gravity Model、シニュレーション、持続可能

[RF-078 アジアにおけるバイオ燃料の持続的需給システムの構築に関する研究]

(5)アジア圏での持続可能なバイオ燃料の利用を可能にするための社会的要件に関する研究[PDF](586KB)

  千葉大学
  大学院園芸学研究科


丸山 敦史

  [平成19~20年度合計予算額] 1,043千円(うち、平成20年度予算額 596千円)

[要旨]

  本サブテーマでは、まず、既往の調査結果と二次統計資料を用いて、バイオエタノール市場の動向を記述的に分析した。エタノールの生産はアメリカとブラジルに特化していること、エタノールの主要輸出国の構成には大きな変化があり、その結果、現在はブラジルが中心となっていること、そして、エタノールの輸出先にも顕著な変化があることなどが明らかになった。次に、エタノール貿易の構造をGravity Modelを用いて分析した。2国間距離が短く、輸入国および輸出国のGDPが高いほどエタノール貿易が盛んになること、2005年、2006年に構造的な変化があるが、2国間距離については時系列的に安定しており、全期間を通じて貿易量に最も大きな影響を与えていることが明らかになった。更に、持続可能なバイオ燃料の需給モデルの成立条件について検討した。モデル分析の結果、多くの仮定が置かれているものの、距離が近い日本-ASEANでのバイオ燃料の貿易は、相対的に大きな生産者利益および消費者余剰を確保できるという点から好ましく、生産国・消費国の双方に潜在的メリットがあることが分かった。同時に、サブテーマ①~⑤の研究成果をもとに、持続可能なバイオ燃料の需給システムを実現するための要件を整理した。フィリピンの事例では、バイオ燃料の質自体に環境性能的な問題は少ないが大幅な供給能力の向上が必要であること、しかし、原料作物の生産拡大は栽培面積の拡大に依存しやすいという点で問題が起こりやすいこと、また、製糖工場にとっても、燃料生産は必ずしも魅力的なオプションにはなっていないことなど、多くの課題が示された。長期的視点に立ち、近隣地域で持続的にバイオ燃料を需給できる体制を作るために、日本が主体的に関われることは多いだろう。