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[キーワード]フィリピン、バイオ燃料作物、サトウキビ、農家行動、土地利用

[RF-078 アジアにおけるバイオ燃料の持続的需給システムの構築に関する研究]

(4)フィリピンにおけるバイオ燃料原料生産の拡大に伴う環境及び社会システムへの影響
  に関する研究[PDF](1,624KB)

  千葉大学
  大学院園芸学研究科


丸山 敦史

<研究協力者>

 

  フィリピン科学技術省
  農林天然資源研究開発会議
  社会経済調査局


Dr. Albert P. Aquino

  [平成19~20年度合計予算額] 4,590千円(うち、平成20年度予算額 1,716千円)

[要旨]

  本サブテーマでは、フィリピンを対象に、燃料作物の供給可能性に関わる問題を実証的に分析・検討する。まず、主要な澱粉系、砂糖系作物の生産動向に関する研究では、バイオエタノールについてはサトウキビが、バイオディーゼルについてはココナッツがフィリピンにおける有力な原料作物であることが分かった。また、国が掲げるバイオエタノールの導入目標を達成するためには、ココナッツよりもサトウキビに強い生産制約が現れることを示した。次に、ネグロス島での現地農家調査に基づく研究では、まず、当該地域が、製糖工場に強く依存した地域社会・経済構造になっていることを確認した。また、そこでのサトウキビ生産は、大規模農家ほど反収が高く肥料の投入が多い傾向があること、農家の生産技術に統計的に有意なレベルでの非効率性はないこと、反収を増加させるためには生産要素の投入量を直接的に増やす必要があることなどを明らかにした。更に、生産拡大の阻害要因として、当座の資金不足を挙げる農家が最も多いこと、規模が大きい農家ほど砂糖価格の上昇に応じて栽培面積を拡大する意向が強くなることが示された。最後に、ネグロス島サンカルロス市の衛星画像から、2005年と2008年の土地利用データを入手し、サトウキビ園の分布とその変化を調査した。分析の結果、平地の一部地域で荒れ地などからサトウキビに土地利用が移った場所があること、サトウキビ園は比較的標高が高く道路条件が悪いエリアにも広がりうることが分かった。これらは、サトウキビの増産に伴う負荷がどこに掛かりやすいかを明らかにするものであり、バイオ燃料の利用を持続的に行いうる需給システムを考える際に重要な資料を提供する。