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[キーワード]国内移入、mtDNA、集団遺伝学、コイ科魚類、遺伝的攪乱

[RF-075 国内移入魚による生態系攪乱メカニズム究明とその監視手法の構築]

(3)国内移入魚による遺伝的多様性攪乱メカニズムの究明とモニタリング手法の構築に関する研究[PDF](465KB)

  岐阜大学 地域科学部

向井貴彦

<研究協力者>

 

  岐阜大学 地域科学部

早川明里

  岐阜大学 大学院地域科学研究科

武内陽佑

  [平成19~20年度合計予算額] 5,806千円(うち、平成20年度予算額 2,770千円)

[要旨]

  九州北部における国内移入魚の侵入と定着について、侵入種の分布拡大過程の追跡をおこなうとともに、在来個体群の遺伝的攪乱の検出を目的として遺伝子解析をおこなった。九州北部で採集した淡水魚に加えて全国のサンプルを採集し、DNA抽出とmtDNAの塩基配列決定をおこなった。九州における国内外来種のハスについてmtDNAの系統と遺伝的多様性を調査した結果、複数の地域に個別に侵入した後、さらに九州内での分布拡大が生じたことが示された。琵琶湖と九州に同種が生息するコイ科魚類のゼゼラ、オイカワ、モツゴについても様々な産地から得た多数個体のmtDNAの比較をおこなったところ、九州のゼゼラは琵琶湖から侵入したmtDNAの頻度が高いことが示された。オイカワは琵琶湖から侵入したmtDNAの出現地点が限定的であり、侵入者に対する在来個体群の集団サイズが大きいことが、侵入率を低く抑えている可能性が考えられた。モツゴは、琵琶湖産アユではなく、フナやコイの移殖に混入すると考えられているが、九州には大陸から移殖された系統と関東・東海地方の系統が侵入しており、近畿地方のフナやコイに混入したと考えられるものは分布しなかった。
  遺伝的攪乱のモニタリング手法として、他地域からの侵入状況の把握に対してmtDNAの部分塩基配列の解析が有効であることが示されたため、簡便法としてのPCR-RFLPとマルチプレックスPCRによる在来・非在来mtDNAの判別をオイカワとモツゴに対しておこなった。その結果、PCR-RFLPが有効であることが確認された。初期投資費用の概算を行ったところ、PCR-RFLPに必要な設備を買いそろえるには約60万円の予算で可能であり、各地域の生物相調査への貢献の大きいアマチュア研究者や高校での設備導入も促進可能な金額であると考えられる。