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[キーワード]ヨウ素エアロゾル、ヨウ化アルキル類、硝酸ラジカル、生成機構解明、反応速度測定

[RF-071 地球温暖化に影響を及ぼす人為物質による大気ヨウ素循環の変動に関する研究]

(1)地球温暖化に影響を及ぼす人為物質による大気ヨウ素循環の変動に関する研究[PDF](514KB)

  広島市立大学 情報科学研究科

中野幸夫

  [平成19~20年度合計予算額] 14,435千円(うち、平成20年度予算額 6,935千円)

[要旨]

  本研究は、大気ヨウ素エアロゾルの前駆体となる一酸化ヨウ素ラジカル(IOラジカル)などの反応性ヨウ素化合物の大気中での生成過程に人為活動起源物質が与える影響を明らかにし、その地球温暖化へ与える影響の見積ができるようになることを目的として行った。具体的には、自然活動起源のヨウ化アルキル類と人為活動起源の窒素酸化物である硝酸ラジカル(NO3ラジカル)との反応、また、フロンやハロンの代替物質として今後使用されるヨウ化トリフルオロメタン(CF3I)とNO3ラジカルとの反応測定を行った。自然活動起源のヨウ化アルキル類とNO3の反応の測定では、ヨードメタン(CH3I)、ヨードエタン(C2H5I)、クロロヨードメタン(CH2ClI)、ブロモヨードメタン(CH2BrI)に対してNO3ラジカルとの反応の測定を行った。また、測定を行ったヨウ化アルキル類とNO3ラジカルの反応が大気中のIOラジカル濃度にどのような影響を与えるかを見積もるために一次元ボックスモデル計算を行った。その結果、CH3IとNO3ラジカルの反応をボックスモデル計算に加えることにより大気中のIOラジカルの濃度は反応を加えない時に比べて約10倍大きくなった。この結果は、大気中のIOラジカルの濃度はこれまで考えられていたより約10倍高い可能性があることを示している。また、CF3IとNO3ラジカルの反応の測定も行い、反応速度定数の決定を試みた。その結果、CF3IとNO3ラジカルの反応は非常に遅いことがわかった。このことより、大気中におけるCF3Iの消費過程は主に昼間の太陽光分解で、夜間において、CF3IはNO3との反応によりほとんど消費されず、CF3Iが大気中に蓄積されていくことがわかった。本研究成果は、大気中の反応性ヨウ素化合物の濃度のモデル計算による見積精度の向上につながり、結果として、ヨウ素化合物の連鎖反応による大気エアロゾル濃度バランスへの寄与をより正確に評価できるようになる。