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[キーワード]気候モデル、評価手法、自己組織化マップ、EOF解析、台風抽出

[RF―070 自己組織化マップを用いた気候変動の評価に関する研究]

(1)自己組織化マップを用いた気候変動の評価に関する研究[PDF](1,154KB)

  慶應義塾大学 法学部

杉本憲彦

  名古屋大学 工学研究科 計算理工学専攻

橘 完太

<研究協力者>

 

  独立行政法人国立環境研究所
  大気圏環境研究領域 大気物理研究室


野沢 徹

  独立行政法人国立環境研究所
  地球環境センター


塩竈秀夫

  国土交通省気象庁気象研究所 気候研究部

水田 亮

  名古屋大学 工学研究科

Pham Minh Tuan・吉川大弘・古橋 武

  [平成19~20年度合計予算額] 5,270千円(うち、平成20年度予算額 2,470千円)

[要旨]

  地球温暖化の要因を研究する際、多次元の気候データから主要な変動を抽出する手法として、EOF解析 (主成分分析)が伝統的に用いられてきた。しかしながら、線形のEOF解析の寄与率は低く、正確に主要モードを抽出できない。また、気候モデルの温暖化予測実験の結果は、依然ばらつきが大きく、モデルの評価基準の欠如は大きな問題である。
  本研究では、EOF解析に代わる可視化手法として自己組織化マップを提案し、この手法を用いた解析により、気候モデルの評価基準を与えることを目的とした。この手法は、神経細胞のモデルであるニューラルネットを用いて非線形写像を獲得するもので、既に幅広い分野で有用性が示されている。しかしながら、大規模な気候データへの適用は計算コストの面から困難であった。そこで本提案手法では初めに、動的なニューロンの生成により、従来の数万倍の高速化を実現した。
  まず観測データを用いた解析により、本手法が、EOF解析の補間的及び代用的な利用に有効であることを示した。次に長期間の気候モデルデータ解析から、気候の主要モードの空間構造を抽出した。またマルチ気候モデルのデータ解析から、モデルのばらつきも評価可能であった。
  また同時に、大規模気候データから高速に台風を抽出し、危険度を自動評価する手法を新たに提案した。本手法では、曲率を強調する流線を用いることで、全探索せずに高速に台風を抽出できた。観測データを用いた台風抽出実験により、新手法は抽出精度においても従来手法を上回り、その有効性が示された。また高解像度モデルデータにおいても良好な結果を得た。
  本研究は、主要モードの再現性の観点からモデルの評価基準を与えるため、信頼性のより高いモデルが選定可能であり、今後の気候モデルの開発指針の提供に貢献する。また温暖化予測実験の結果から、温暖化の主要モードの空間構造が抽出可能である。これらは、温暖化シナリオの見直しや改善に結びつき、今後の地球温暖化対策の提案に繋がるものである。