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[キーワード]生態史、生業転換、農薬、変化のドライブ要因、環境影響

[H-063 アジア地域における経済発展による環境負荷評価およびその低減を実現する政策研究]

(3)「バイオマス・生物多様性の評価と生業にかかわる基本データの収集・分析」に関する研究[PDF](645KB)

  東京大学 大学院医学系研究科
  国際保健学専攻


梅崎昌裕

<研究協力者>

 

  東京大学 大学院医学系研究科

蒋 宏偉

  東京大学 東洋文化研究所

池本幸生

  東京大学 国際連携本部

古澤拓郎

  佐賀大学 農学部

稲岡 司

  千葉大学 文学部

小谷真吾

  国立歴史民俗博物館 考古研究部

西谷 大

  北海学園大学 文学部

須田一弘

  インドネシア国 Padjadjaran 大学

Oekan Abudollah・Budhi Gunawan
・Dede Trisna

  バングラデシュ国  DGHS

Zakir Hossein・Haque Bokul

  バングラデシュ国 NIPSOM

Aktar Ahmad

  パプアニューギニア国 PNGIMR

Peter Siba・Suparat Phuanukoonnon
・Ivo Muller

  パプアニューギニア国 DSWD

Beno Pupan

  中国 海南省CDC

Pan Xianhai・Wang Shanqing

  中国 海南省民族博物館

Luowenxiong

  中国 中央民族大学

Yang Shenmin

  ベトナム国 ベトナム国立大学

Tran Dinh Lam

  ベトナム国 チョーライ病院

Hoang Hoa Hai

  ネパール国  NDRI

Krishna Pahari

  [平成18~20年度合計予算額] 46,122千円(うち、平成20年度予算額 15,096千円)

[要旨]

  中国をはじめとするアジア諸国の農村部では、在来農耕から換金作物栽培への転換が急速にかつ広範に進行している。こうした市場経済化は、バイオマスと生物多様性の減少、農薬・プラスチック製品をはじめとする化学物質の導入と周辺環境への放出・蓄積といった、環境へのインパクトを必然的に伴う。サブテーマ(3)「バイオマス・生物多様性の評価と生業にかかわる基本データの収集・分析に関する研究」は、インドネシア、中国・海南省、バングラデシュ、パプアニューギニア、ベトナム、ネパールの32村落における聞き取り調査によって、市場経済化と生業転換、化学物質使用の変化を経時的に復元し、それにともなう人々の生存戦略(食物摂取、労働負荷など)の変容を明らかにした。さらに、空間情報科学の技術を応用し、対象村落周辺部の植生指標を推定した。
  村落ごとの事例を記述的に分析したところ、アジア・太平洋地域で過去50年間におこった生業転換とその環境影響、そこへの政策のかかわりは、農業技術の進展に伴う生産性の向上と余剰資源の発生、インフラ整備にともなう機会均等性の実現、社会を裏打ちしていた自然と文化の衰退が共通して進行したことが明らかになった。一方、外部からの働きかけに対する対応には大きなヴァリエーションが観察された。さらに、事例を構成する要素を、生業転換をドライブする変数群(X:政策、市場経済の影響、インフラ整備、welfareの感覚)と、生業転換そのものを記述する変数群(Y:在来農耕のタイプ、換金作物の導入程度、新技術の導入程度など)、そして生業転換の影響を記述する変数群(Z:環境ならびに健康への影響;化学物質の蓄積と将来的リスクなど)に整理し、変数間の相互関係を検討したところ、単一の目的を想定した外からの働きかけ(政策など)が想定外のさまざまな変化と影響をうみだしたことが明らかになった。このことは、環境保全と開発への外部からのかかわりにおいては、健康影響を含む多層的な評価が不可欠であることを示唆している。