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[キーワード]ヤンバルクイナ、Gallirallus okinawae、寄生虫、nested PCR、duplex real-time PCR

[F-062 渡り鳥によるウエストナイル熱及び血液原虫の感染ルート解明とリスク評価に関する研究]

(4)鳥類消化管内寄生虫の遺伝子診断に関する研究[PDF](1,011KB)

  EFフェロー

Chen Zhao

  独立行政法人国立環境研究所
  環境研究基盤技術ラボラトリー
  生物資研究室


桑 名貴

  [平成19~20年度合計予算額] 5,016千円(うち、平成20年度予算額 2,749千円)

[要旨]

  本研究では、国内の絶滅危惧種の一つであるヤンバルクイナ(Gallirallus okinawae)の消化管内寄生虫を調査し、その寄生虫種を対象とした遺伝子診断法を開発するとともに寄生虫感染をコントロールする方法を開発する。最初にヤンバルクイナ46個体の消化管より内部寄生虫の分離を試みた。線虫類は46個体中26個体より分離され、形態学的観察によってHeterakis属であることが確認された。また別の2個体からは鉤頭虫類(Acanthocephala)を分離した。更に、13個体からは斜睾吸虫科(Plagiorchiida)と思われる吸虫が分離された(このうちの7検体からは線虫も分離された)。つぎに線虫と吸虫を識別するために、ユニバーサルプライマー239および240で増幅されたミトコンドリアDNA・チトクロームC・オキシダーゼ・サブユニット1(COX1)の塩基配列に基づいて、線虫および吸虫の特異的なPCRプライマーを設計した。そして、そのプライマーを使用したnested PCR法を開発した。このnested PCR法を線虫および吸虫の両方の虫卵を含包する新鮮な糞便サンプルに応用したところ、今回設計した種特異的プライマーは、寄生虫の同定に使用可能であることが分かった。さらに、ヤンバルクイナの寄生虫の同定をより迅速に行うため、duplex real-time PCRアッセイ法を開発した。非特異的反応を避けるため、プライマー239と240によって増幅される部分より上流のチトクロームオキシダーゼ・サブユニット1遺伝子の配列を決定し、線虫用と吸虫用のプローブとプライマーをそれぞれ設計した。これらのプライマーとプローブを使用することで、反応回数は一回のみとなり、PCR産物を確認するための電気泳動を実施する必要もなくなった。糞42サンプルについて nested PCRとduplex real-time PCRを適用し、信頼性と有効性の比較を行った。その結果、両方で寄生虫卵から寄生している線虫と吸虫を検出できることが分かった。ただしduplex real-time PCRの方が吸虫の検出感度が高く手順が簡素であるため、臨床現場での有用性は高い。