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[キーワード]シギ・チドリ類、ウエストナイルウィルス、モニタリング、VecTest、LAMP法

[F-062 渡り鳥によるウエストナイル熱及び血液原虫の感染ルート解明とリスク評価に関する研究]

(1)渡り鳥(シギ・チドリ類)における病原体感染に関する研究[PDF](1,105KB)

  独立行政法人国立環境研究所
  環境研究基盤技術ラボラトリー
  生物資研究室


桑名 貴・大沼 学

  [平成18~20年度合計予算額] 104,650千円(うち、平成20年度予算額 38,102千円)

[要旨]

  ウエストナイル熱は長距離を移動する渡り鳥によって分布を拡大させる可能性が大きく、極東ロシア地域から我が国への分布拡大が懸念されている。そこで、ウエストナイルウイルスを媒介する蚊の活動が活発化する時期に極東ロシア地域より飛来するシギ・チドリ類を対象にウエストナイル熱のモニタリング体制の整備と実際の運用を平成18年~平成20年にかけて行った。最初に、バンダーと獣医師が共同し、これまでに別個に実施されていた鳥類の標識調査と感染症調査を連携して行う体制を整えた。次にウエストナイルウイルスの各種検査方法を比較・検討した。その結果、野外での一次スクリーニングにはウエストナイルウイルス簡易診断キット(VecTest)を、確定用の高感度検査方法としてLAMP法(栄研化学株式会社)を今回のモニタリングに導入することとした。シギ・チドリ類の捕獲調査は以下の8ヶ所で行った。北海道根室市春国岱(平成18年度~平成20年度)、北海道紋別市コムケ湖(平成18年度~平成20年度)、北海道釧路市釧路湿原(平成18年度)、北海道苫小牧市ウトナイ湖(平成18年度)、熊本県荒尾市牛水(平成18年度)、沖縄県(平成18年度~平成20年度)。また、沖縄県・NPO法人どうぶつたちの病院に収容された傷病鳥もウイルス検査対象とした。最終的に平成18年度から平成20年度にかけて46種1,131個体をよりウイルス検査用の口腔内スワブを採取した。これらの口腔内スワブを使用して、平成18年度はウエストナイルウイルス簡易診断キット(VecTest)のみで、平成19年度と20年度についてはウイルス簡易診断キットとLAMP法を併用してウエストナイルウイルス検査を行った。その結果、46種1,131個体すべて陰性であることを確認した。その結果、現在のところウエストナイルウイルスが国内に侵入している可能性が低いと判断した。その他に、国内におけるモニタリング体制の整備と平行して、ロシア連邦・ボロン自然保護区とタイ王国・カセサート大学との間でウエストナイルウイルスのモニタリングを連携して行う体制を整えた。