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[キーワード] オゾン、コムギ、光合成速度、葉の老化、品種

[C-062 東アジアの植生に対するオゾン濃度上昇のリスク評価と農作物への影響予測に関する研究]

(6)東アジアにおけるコムギ品種の光合成に及ぼすオゾンの影響解明[PDF](505KB)

  東京大学 大学院農学生命科学研究科
  農学国際専攻 国際植物資源科学研究室


FENG Zhaozhong・小林 和彦

<研究協力者>

 

  東京大学 大学院農学生命科学研究科
  農学国際専攻 国際植物資源科学研究室


PANG Jing

  中国科学院 土壌科学研究所

ZHU Jianguo

  中国江蘇省 揚州大学農学院

GUO Wenshan

  [平成19~20年度合計予算額] 4,040千円(うち、平成20年度予算額 1,856千円)

[要旨]

  オゾン濃度上昇が冬コムギに及ぼす影響を、メタアナリシスと開放系圃場実験で明らかにした。メタアナリシスでは、1980年~2007年に出版された53編のピアレビュー済み論文でデータベースを構成し、オゾンの増加がコムギの生長、ガス交換および収量に及ぼす影響を定量的に評価した。その結果は、地表オゾン濃度の増加がコムギの収量を29%(95%信頼区間で 24~34%)、地上部バイオマスを18%(同じく13~24%)低下させることを示した。一方開放系実験では、コムギ2品種の分げつ期から収穫期にかけて、外気の50%増のオゾン増加実験を行った。実際のオゾン濃度上昇は27%であったが、このオゾン濃度上昇が光合成色素、ガス交換速度、脂質酸化に及ぼす影響を、止葉の発育に沿って分析したところ、品種Y2ではオゾンによって老化が促進された。具体的には、光合成色素すなわちクロロフィルやカロテノイドの含量が低下し、光合成速度が減少、脂質の酸化が進んだ。一方、品種Y16においては、光合成色素の含量低下のみが見られた。オゾン濃度上昇はまた、品種Y2の光合成にも影響を及ぼし、気孔への影響を通してあるいは気孔以外への影響を通して、炭酸固定速度を低下させた。そうした影響は品種Y16には見られなかった。品種Y2では、オゾンの影響が葉齢の進みとともに全般的に進行したが、品種Y16では一部の変化しか進行しなかった。また、Y2のほうがY16よりも10日ほど早くオゾンの影響が観察された。こうした結果から、品種Y2のほうがY16よりもオゾンの影響が出やすいこと、またこうした品種間の差は、気孔を通してのオゾン取り込み量では説明できないことが示された。