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[キーワード] 二酸化硫黄、黄砂粒子、シュウ酸、フッ化水素、沈着

[C-061 広域モニタリングネットワークによる黄砂の動態把握と予測・評価に関する研究]

(3)黄砂粒子と大気汚染ガス成分の反応機構解明に関する研究[PDF](727KB)

  埼玉大学 理工学研究科 環境科学・社会基盤部門

  坂本和彦

  埼玉大学 工学部 応用化学科

  石原日出一

<研究協力者>

 

  埼玉大学大学院 理工学研究科

  高田尚枝・堀田陽一
  川島裕司・江原 庸

  埼玉大学  工学部応用化学科

  小笠原聡・新井俊広・吉原理紗

  [平成18~20年度合計予算額] 13,921千円(うち、平成20年度予算額  4,560千円)

[要旨]

  黄砂が年間を通じて、韓国、日本、そして太平洋にまで長距離輸送されている。この輸送過程において、塩基性である黄砂粒子と中国国内で大量に放出されたSO2との反応が数多くの観測結果から示唆されている。黄砂粒子上へのSO2の沈着・酸化過程の広域環境への影響が懸念されているが、その実態は未だ詳しくわかっていない。また、中国国内では、石炭燃焼起因のSO2に加えて、NOx とVOCの排出増加に伴い、光化学スモッグも頻発している。石炭燃焼では、SO2とともに微量のフッ化物が排出されており、中国国内での酸性雨やエアロゾルにフッ化物が含まれていることが報告されている。また、VOCからの光化学反応生成物である低分子量ジカルボン酸、シュウ酸の比較的高い濃度が観測されている。HFやシュウ酸は、SO2と同様に酸性物質であることから、塩基性の黄砂と反応する可能性がある。
  そこで、本研究では、円筒型流通式反応器を用いて、黄砂粒子へのSO2沈着・酸化に対するHFやシュウ酸ガスの影響を調査した。高濃度におけるSO2とHFの沈着実験において、HFによるSO2酸沈着の抑制効果が見られた。また、シュウ酸の存在により、SO2の沈着は抑制されたが、シュウ酸自身は、その高い反応性から、SO2による沈着は影響を受けなかった。
  多くの研究では、Knudsen cellなどを用いて低圧条件における鉱物粒子へのSO2沈着実験が行われているが、本研究では、円筒型流通式反応器により、常圧のまま、実験流速、反応ガス、湿度等のパラメータを変化させ、より実大気に近い条件で黄砂粒子とSO2との反応を調査した。黄砂の長距離輸送中における、黄砂粒子に対するSO2反応量の予測を可能とするため、大気モデル計算への適用可能なSO2の沈着係数を求めた。