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[キーワード] 気候モデル、温室効果ガス増加、エアロゾル変化、土地利用変化・植生改変・アジアモンスーン

[B-61 人間活動によるアジアモンスーン変化の定量的評価と予測に関する研究]

(5)人間活動によるアジアモンスーン変化の総合的解析[PDF](563KB)

  名古屋大学 地球水循環研究センター

安成哲三・中村健治・藤波初木

<研究協力者>

 

  名古屋大学 地球水循環研究センター

堀正岳・V.Prasanna

  [平成18~20年度合計予算額] 50,306千円(うち、平成20年度予算額 13,128千円)

[要旨]

  サブグループ1の大気海洋結合気候モデル(CGCM)による20世紀再現実験結果(T42版)を、サブグループ2による過去100年および50年におけるアジアモンスーン地域の観測降水量変化と詳細に比較した。その結果、過去50年間(1951-2000年)の観測降水量変化の解析により、南アジアと東アジアのモンスーン前半(6-7月)を中心に弱いながら増加傾向と、対照的に西南アジア、アラビア、北東アフリカの乾燥地域の顕著な降水量減少が見られ、対応する大規模な熱帯東西モンスーン循環の強化が示唆された。これらの観測降水量変化と、温室効果ガス増加およびエアロゾル増加を別々に評価したCGCM実験による降水量変化を比較した結果、温室効果ガス増加とエアロゾル増加のいずれもが、すでに20世紀のモンスーン変化に大きな影響を与えている可能性が示唆された。さらに、インド亜大陸にみられる北東部での増加傾向のトレンドは、温室効果ガスのみによるCGCMの結果とよく対応し、南西部の減少傾向トレンドは、それほど顕著ではないが、エアロゾル効果のみを考慮したCGCMの結果と比較的対応していることが明らかになった。
  温室効果ガス増加の影響が無視できる産業革命以前の1700-1850年については、大気大循環モデル(AGCM)による数値実験により、植生改変(森林破壊)のモンスーン気候への影響を、サブグループ4と共同で行い、インドと中国南部域で特に顕著な変化傾向を見出したが、その詳細な熱・水収支変化から、植生改変の効果のダイナミクスを考察し、論文として出版した。
  また、IPCC-AR4に参加した8つの大気海洋結合モデルの21世紀予測実験の結果を、インドモンスーンの大気水収支変化に着目して解析した結果、どのモデルにおいても降水量(P)は増加しているが、その空間分布は、陸上・海上で大きく異なり、増加に寄与する蒸発量と水蒸気収束量の割合も、モデルにより大きく異なることがわかった。