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[キーワード] 気候モデル、植生改変、アジアモンスーン、雲解像モデル、降水メカニズム

[B-61 人間活動によるアジアモンスーン変化の定量的評価と予測に関する研究]

(4)気候モデル「土地被覆・植生改変」実験によるアジアモンスーン変化の研究[PDF](2,801KB)

  独立行政法人海洋研究開発機構
  地球環境フロンティア研究センター
  水循環変動予測研究プログラム

高田久美子・田中克典
吉兼隆生・斉藤和之
川瀬宏明・高橋洋

<研究協力者>

 

  首都大学 東京大学院
  都市環境科学研究科


山島亮二

  独立行政法人海洋研究開発機構
  地球環境フロンティア研究センター
  水循環変動予測研究プログラム


川瀬宏明

  [平成18~20年度合計予算額] 33,784千円(うち、平成20年度予算額 11,466千円)

[要旨]

  土地被覆・植生改変がアジアモンスーンに及ぼす影響について、歴史的な植生分布データを与えた大気大循環モデルによる中解像度実験を行い、人為起源の気候変動要因が主に植生改変だったと考えられる1700-1850年の変化について調べたところ、インド亜大陸西岸と中国南東部では耕地化によって粗度が減少する効果が顕著に現れて夏季降水量が減少することが示され、インド亜大陸西岸の降水量減少はヒマラヤの氷河コア解析によるインドのモンスーン降水量の長期変動と定性的・定量的に一致することが明らかになった。また、1700-1850年の季節変化への影響について調べたところ、インド亜大陸で春季の地表面の乾燥化が明らかになり、モンスーンの開始が遅れて終了が早まっていた可能性が示唆された。一方、植生改変によって有機エアロゾルの発生量が変化する複合効果について調べるために、有機エアロゾル発生量の算定資料となる葉バイオマス量の推移を歴史的植生分布変化に基づいて推定した。
  高解像の領域気候モデルを用いて降水と局地循環の変化を含めた植生改変の影響を調べたところ、インドシナ半島では耕地化による地表加熱の増大は降水量の増大をもたらすことが示され、 過去30年間の9月の降水量の減少傾向は、植生が変化しなくても大規模な大気場の長期変動を与えることによって説明できることが明らかになった。半乾燥地域の黄河潅漑域では、潅漑による地表面温度の低下によって水平温度勾配に起因する局地循環が形成され、高解像衛星データで示された特徴的な雲分布をもたらすことを明らかにした。一方、梅雨降水帯への影響について広域を対象とした領域気候モデルによる植生改変実験を行い、水蒸気輸送域や陸上降水帯が顕著に変化することを示した。また、再解析データによる大規模循環場の過去の変動量を上乗せした疑似温暖化実験を行って梅雨降水帯の過去の長期変動を再現できることを示し、GCMによる将来の変化予測量を上乗せした実験では、GCMのモデルバイアスを大きく軽減することを示した。