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[キーワード] エアロゾル、アジアモンスーン、気候モデル、間接効果、気候変動

[B-61 人間活動によるアジアモンスーン変化の定量的評価と予測に関する研究]

(3)気候モデル「エアロゾル増減」実験によるアジアモンスーン変化の評価[PDF](2,206KB)

  名古屋大学大学院
  環境学研究科 地球環境科学専攻


神沢 博・須藤健悟

<研究協力者>

 

  九州大学 応用力学研究所

竹村俊彦

  名古屋大学大学院
  環境学研究科 地球環境科学専攻


永尾一平・齊藤伸治

  [平成18~20年度合計予算額] 31,936千円(うち、平成20年度予算額 9,146千円)

[要旨]

  各種エアロゾルのアジアモンスーンへの影響を明らかにするために、化学・エアロゾル気候モデルを構築して、数値モデル実験を行い、以下のような成果を得た。1)全球を対象としたエアロゾル気候モデルSPRINTARS内で扱われているエアロゾル・雲生成過程に関するスキーム整備を行った。また、エアロゾルおよびエアロゾル源気体の地表エミッションデータベースを、既存のものを基に、東アジア域の精緻化を中心に、整備した。2)今後はアジア域で硫酸塩よりも硝酸塩の増加が見込まれることから、SPRINTARSにエアロゾル熱力学平衡モジュールを組み込み、化学気候モデルCHASERの活用により硝酸塩(NO3-)のシミュレーションを新たに導入して、化学・エアロゾル気候モデルを構築し、診断計算を行って、モデル中の硝酸塩シミュレーションの妥当性を確認した。その結果、特にインド周辺において、アンモニウム濃度が高いために高濃度の硝酸塩が、放射・雲/降水過程への影響として、硫酸塩(SO42-)に匹敵する可能性があることを明らかした。3)水溶性のエアロゾルとしては、硫酸塩、硝酸塩の他に、有機炭素エアロゾルがある。そのうち、陸域植生から放出された炭化水素類が大気中で酸化されて生じる二次有機エアロゾル(SOA)は、森林から農地への転換などの土地利用変化に伴う植生種別変化や葉バイオマス変化などにより、大きく変化すると考えられる。アジア域でのこのSOA変化が、アジアモンスーンにどのように影響するかについて数値モデル実験を行うため、サブテーマ4と連携し、植生からの SOA エミッションデータを作成した。4)土地利用変化などに伴う硝酸塩およびSOAの各エアロゾルの変化の気候影響を明らかにするため、過去(産業革命前)および現在の気候を再現する数値モデル実験を実施し、それぞれのエアロゾルの放射強制力を見積もった。この結果、特にインド・バングラデシュを中心とした南アジア域においては、硝酸塩増加による強い冷却効果(-1 W m-2)とSOA減少による強い加熱効果(+0.5から+1 W m-2)とが起こることを明らかにした。