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[キーワード]有毒微細藻、人為的輸送、種苗、活魚運搬車、マガキ

[RF-066 個体群分子タイピングによる有毒微細藻類の人為的グローバル化の実体解明手法の開発]

(2)人間活動による有毒微細藻類の海域間移動の直接的な検証[PDF](1,765KB)

  独立行政法人水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所
  赤潮環境部  有毒プランクトン研究室


松山幸彦・山口早苗

  [平成18~19年度合計予算額] 5,847千円(うち、平成19年度予算額 3,348千円)

[要旨]

  国内の2海域から入手したマガキ種苗から、珪藻類の他に麻痺性貝毒の原因となる有毒渦鞭毛藻の一種Alexandrium tamarense等、渦鞭毛藻類を中心とした有毒微細藻類が付着して輸送されてきたのを確認した。マガキ種苗が付着したコレクター1枚から、A海域産の種苗では貝殻外側の部分に最大42細胞、貝殻内部からの排出物には最大720細胞のA. tamarenseの出現(遊泳細胞)を確認した。B海域産の種苗からは、貝殻外側の部分に120細胞、貝殻内部からの排出物には1,488細胞のA. tamarenseの出現(遊泳細胞)を確認した。いずれの養殖海域でも日常的に莫大な量の種苗を国内の養殖産地へ供給しており、これによって移動している有毒微細藻の総量は、数百万リットルの現場海水に相当するインパクトであると試算された。マガキ種苗に餌として取り込まれた有毒微細藻等は、一部がマガキの体内での消化を免れ、糞として排出された後に速やかに栄養細胞に復帰していることが明らかとなった。
活魚輸送車による有毒微細藻輸送の可能性を調査したところ、全38試料(13県)のうち、25試料から微細藻を生きた状態で検出した。微細藻の種類は珪藻18種、渦鞭毛藻22種、その他4種であった。このうち、有毒微細藻として、5種が含まれていた。活魚輸送車は産地から市場へと毎日のように海域間を移動していること、産地と都市をネットワーク状に移動している。国内で活魚運搬車によって海域間を輸送されている海水量の試算は困難であるが、少なくとも西日本のB海域に隣接した市場に持ち込まれる海水の量は年間数万トンに達すると試算される。
本サブテーマにおいては、国内の経済活動、特に水産物の輸送に伴って海域間を飛び越えて輸送されている有毒微細藻の実態把握を行った。マガキ種苗の輸送や活魚運搬車など一部の経済活動に注目したが、これらの人間活動によって運ばれる有毒微細藻の量は生物多様性を考えるうえで無視できないほど膨大であると判断され、今後監視体制の強化が必要であろう。