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[キーワード]萌芽再生、Cotylelobium、ラタン、Fordia、根系

[E-051 森林-土壌相互作用系の回復と熱帯林生態系の再生に関する研究]

(6)熱帯林生態系の再生/回復モデルの構築と森林管理に関する研究[PDF](628KB)

  鹿児島大学 理学部 地球環境科学科

鈴木 英治

  鹿児島大学 理学部 生命化学科

阿部 美紀子

  教育学部 理科専修(現在 琉球大学理学部)

久保田 康弘

<研究協力者>

  インドネシア インドネシア科学院生物学研究センター

Herwint Simbolon, Joeni Setijo Rahajoe

  インドネシア ハサヌディン大学

Ngakan Putu Oka

  インドネシア 林業公社

Tamrin

  鹿児島大学 理学部地球環境科学科 プロジェクト研究員

渡辺名月

  鹿児島大学 理工学研究科 博士前期課程

Desy Ekawati, Ruliyana Susanti, 平澤健

  平岡環境科学研究所

本郷順子

  [平成17~19年度合計予算額] 24,450千円(うち、平成19年度予算額 6,833千円)

[要旨]

  (1)先駆種18種54個体、極相種28種85個体の稚樹の根系を調べたところ、極相種は主根が発達して地中深く伸び、先駆種は浅く根が広がっていた。先駆種主体の再生は、火災まで至らなくてもエルニーニョなどの乾燥害を受けやすいと考えられる。
  (2)落葉落枝量は重度被害区ほど少なかったが、K1、LD1、HD1区でそれぞれ10.08、9.12、7.02 ton ha-1となった。重度被害区は無被害区と比較して約1割の現存量だが、落葉落枝量は7割あり、火災被害林で生産力の再生が活発であることを示唆した。落葉の分解速度は、先駆種の葉が分解しやすいが同じ種の葉であれば、無被害区の分解が速かった。
  (3)個別の種の再生過程:マメ科低木で極相林性のFordia splendidissimaが、火災被害区でよく再生し根粒菌の宿主となっていた。再生能力の強さの要因は、深根性で火災時にも根が生き残りやすく、萌芽性が強く、再生から数年で結実し種子からの繁殖も早期に可能になるためであろう。19種775個体を切り取り、萌芽再生を半年間追跡した。萌芽能力が高い種が数種あり、それらは火災後もよく再生しており萌芽能力の重要性が示唆された。フタバガキ科では唯一Cotylelobium melanoxylonの萌芽率が高く、フタバガキ科に共生する菌根菌の宿主となっていた。埋土種子は、各区で20cm×20cm×5cm×20個の土を採取して発芽個体を調べた。全体で3300個体52種出現し、樹木は22種合計1120本発芽したが、そのほとんどが先駆種であり、極相種は2種7個体だけであった。実生を含むラタンの種数(ha-1)および密度は(ha-1)、23種・3321本(K1)、16種・88本(LD2)、8種・24本(HD2)であった。近くに残存林があるので動物による種子散布が活発で比較的早く多様性が回復したと考えられた。
  埋土種子を持つ先駆種、萌芽しやすい一部の極相種、母樹が火災に強い種が森林の再生に最初に貢献し、残りの種は近くの残存林から種子が供給された後に再生する。再生が速く微生物とも共生する樹種の存在が微生物の多様性保全に重要であると考えられた。