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[キーワード]熱帯林、森林火災、森林再生、木材腐朽菌、落葉分解菌

[E-051 森林-土壌相互作用系の回復と熱帯林生態系の再生に関する研究]

(4)熱帯林における腐生菌類の遷移とその森林再生に果たす役割の研究[PDF](485KB)

  独立行政法人・森林総合研究所
  森林微生物研究領域


阿部 恭久

  独立行政法人・森林総合研究所
  きのこ・微生物研究領域


根田 仁

<研究協力者>

  インドネシア科学院生物学研究所

Y. B. Subowo, Herwint Simbolon

  独立行政法人国立環境研究所

清水英幸(微気象観測分野)

  (株)ウイジン

田渕尚一(微気象観測分野)

  [平成17~19年度合計予算額] 8,546千円(うち、平成19年度予算額 2,561千円)

[要旨]

  ブキット・バンキライにおいて、1997と1998年の大規模森林火災被害を受けた被害林および火災被害を受けなかった無被害林の腐生菌類相を調査し、被災森林の回復状態を評価した。調査は軟質菌類(ハラタケ目など)と硬質菌類(ヒダナシタケ目など)の対象毎に行った。
  軟質菌類は、重度被害区、軽度被害区、無被害区で、2005年10月~2008年2月にきのこ子実体を採集した。全体の標本数に占める比率(3年間の加重平均)は、いずれの区でも木材腐朽菌の比率が最も高く(43.8~53.6%)、無被害区では土壌生息菌(14.6%、その多くは腐植分解菌)と菌根菌(12.5%)の比率が他の2区(7.8~11.4%および3.4~4.6%)より高かった。多くの菌は特定の樹種から発生していた。各調査区の構成樹種は異なるため、きのこの種類相は異なっている。落葉分解菌は、Marasmius、 Marasmiellus、Mycena、Gymnopusの4属に所属する種が多かった。
  硬質菌類は毎年9月に、1haの調査区では大型の子実体を形成する菌類を、各区内3カ所に設定した小調査区では全腐朽菌類を調査した。木材腐朽菌の総種数は116種であった。年変動はあるが大型菌類はLD1区で最も多く、K1区、K2区、HD1区が次いだ。LD2区、HD2区は木材腐朽菌の種数は少なく、倒木には少数の褐色腐朽菌だけが生息し菌類相が単純になっていた。
  現地で分離培養した14種21株の木材腐朽菌の培養菌株を用いて木材腐朽試験を行った結果、マカランガ材では大きな重量減少が生じたが、バンキライ材の重量減少は大半の区で5%以下と小さかった。早生樹のマカランガ材は林地においては1年前後で腐朽分解されるが、主林木であるバンキライの材の分解には10年以上の長期の年月がかかると考えられた。
  3年間にわたり被害林と無被害林内の温湿度を観測した結果、被害林では植生回復が進みつつあるが、上木層の質の違いが林内環境に及ぼす影響は大きく、火災被災から10年近く経過しても林内環境が余り改善されていないことが判明した。