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[キーワード]共生細菌、根粒、マメ科樹木、16S rDNA、根圏細菌

[E-051 森林-土壌相互作用系の回復と熱帯林生態系の再生に関する研究]

(3)根粒菌による窒素固定が熱帯林再生に果たす役割の研究[PDF](811KB)

  鹿児島大学 理学部 生命化学科

内海 俊樹

<研究協力者>

  鹿児島大学 理学部 生命化学科

阿部美紀子

  鹿児島大学 理学部 生命化学科

九町健一

  鹿児島大学 博士後期課程
  生命物質システム専攻


瀬戸山愛子

  鹿児島大学 博士後期課程
  生命化学専攻


飯田淳史

  インドネシア科学院生物学研究センター 

Titik K. Prana (PhD), Achirul Nditasari
Dwi Wulandari

  [平成17~19年度合計予算額] 5,392千円(うち、平成19年度予算額 1,645千円)

[要旨]

  根粒菌はマメ科植物と共生することにより、植物体内のみならず根圏土壌への窒素養分賦与の役割も果たしている。この性質により、マメ科植物は荒廃地でも比較的成長が速く、緑地再生時に先駆植物になることが知られている1)。本サブテーマでは、火災焼失した森林の再生過程に根粒菌が果たす役割を検証・考察し、森林再生に有効な樹種と根粒菌の組み合わせの特定に応用出来る系の構築を目的として取り組んだ。平成17年度には現地調査にて、火災被害区に自生するマメ科植物の調査と着生根粒の採集を行い、平成18年度には、根粒内の共生菌の分離と、16S rDNAの部分塩基配列を解析し、系統解析を行い菌種の推定を行った。平成19年度も主に共生菌分離と解析を継続して行った。共生菌の分離は、すべての調査区で成育が確認できたアカシア(Acacia mangium)と、現地種であるFordia splendidissimaの根粒を用いた。また、19年度は最終年度であったことから、再度現地に赴き、調査区域での特にFordia splendidissimaの生育状況についても調査した。
  研究期間終了までに解析の進んだアカシア根粒の共生菌は、Burkholderia gladioli LUC15とStreptomyces phaeopurpureus RRL2660に高い相同性を示し、根粒菌属とは異なる種であった。これらの株についてはさらに詳細な解析を行う必要があるが、Burkholderiaは、木本性マメ科植物に共生する報告例がある2)。一方、Fordia splendidissimaから分離した株は、16S rDNA塩基配列に基づく系統解析を行った結果、Paenibacillus sp. SJH06、 Microbacterium resistens、 Burkholderia sp.とRhizobium sp.と近縁な株であった。
  19年度に行った現地調査では、主にFordia splendidissimaの幼樹の根粒着生について調査した。その結果、同じ程度に成育している個体を比較したところ、重度火災被害区のHD1区に成育していた植物のほぼ全てに根粒着生が認められ、根粒着生数も他の区域に比べ多いという結果より、HD1区において根圏微生物の活動が活発であり、森林再生に貢献していると推測できた。