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[キーワード]地温100℃前線、土中の有機物移動、土壌理化学性、土壌細菌群集構造、菌根菌

[E-051 森林-土壌相互作用系の回復と熱帯林生態系の再生に関する研究]

(2)土壌環境と微生物群集の回復が熱帯林再生に果たす役割の研究[PDF](1,659KB)

  東京大学 大学院農学生命科学研究科

宮崎 毅

  東京大学 大学院農学生命科学研究科

宝月 岱造

  東京大学 大学院農学生命科学研究科

大塚 重人

<研究協力者>

  東京大学 大学院農学生命科学研究科

溝口勝・西村拓・関勝寿・井本博美

  東京大学 大学院農学生命科学研究科 博士前期課程

鈴木香織・小渕敦子・磯部一夫

  東京大学 アジア生物資源環境研究センター

奈良一秀・石田孝英・木下晃彦

  国立環境研究所 アジア自然共生研究グループ

清水英幸

  インドネシア ボゴール農科大学

Nora H. Pandjaitan, Erizal St. Rangkayo Basa, Asep Sapei

  インドネシア インドネシア科学院生物学研究センター

I Made Sudiana, Suliasih, Arif Nurkanto, Herwint Simbolon

  [平成17~19年度合計予算額] 14,682千円(うち、平成19年度予算額 5,955千円)

[要旨]

  (1)土壌への火災の影響を調べるために、模擬火災実験、現地土壌調査、土壌水分モニタリングを行った。模擬火災実験では、円筒状の土壌試料の表面を600~700℃に熱した時に、地表5cm以内の層で地温上昇、土壌水分消失、有機物消失が著しいことを明らかにした。また、地温が100℃を越える深さ(地温100℃前線と呼ぶ)は (ここで、mは定数、tは加熱時間(min))で表され、mは、加熱開始時の水分量が大きい程小さな値になった。森林火災中の地温100℃前線の降下移動特性のモデル化は、世界最先端の知見である。現地土壌調査では、地表面10cm以深の層で、火災時の灰の影響と思われるpHの上昇、燃焼時に生じた炭の影響による有機物の増加を確認するなど、森林火災下での土壌中有機物質移動について新たな知見を得た。
  (2)全細菌のPCR-DGGE解析とT-RFLP解析は、重度、軽度、無被害区(HD1、LD1、K1区)で共通の優占種が生息し、主要細菌相がほぼ回復していることを示した。放線菌のPCR-DGGE解析結果でも、3区に大差なかったが、アンモニア酸化細菌(AOB)では、K1区と他の2区間に差があった。細菌群火災の影響は異なり、AOBは影響を長期的に受けているようだ。培養可能なガラクツロン酸資化細菌は、HD1区で菌数が多く、genotypeの多様性は小さかった。本細菌群の大部分がBurkholderia属とその近縁属に属し、火災の直接的影響への耐性が期待できず、本細菌群集の量的・質的な差は、火災の長期的な影響であると推測された。
  (3)火災の影響がないフタバガキ林では、林床の5~8割に菌根が分布しており、ベニタケ科やイボタケ科を中心とした多様(推定種数は約100種)な菌根菌が生息していた。一方、火災の被害地では菌根量が大幅に減少しており、重度被害区では、林床の約5%にしか菌根が分布していなかった。被害区では菌根菌の多様性も低く、無被害林では見られなかったニセショウロ科の菌根菌が高頻度で検出されるなど、菌根菌の群集構造も大きく変化していた。