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[キーワード] 北部ユーラシア、大気環境、長距離越境大気汚染、広域輸送モデル、モデル間比較

[C-051 アジア大陸からのエアロゾルとその前駆物質の輸送・変質プロセスの解明に関する研究]

(6)バックグラウンド地域(北部ユーラシア)からの輸送と影響に関する研究[PDF](775KB)

  財団法人日本環境衛生センター・酸性雨研究センター

大泉 毅(H17,18), 家合浩明(H19)

  [平成17~19年度合計予算額] 26,280千円(うち、平成19年度予算額 10,680千円)

[要旨]

  東シベリア及び沿海州地域の大気環境に関する研究では、欧州からアジア地域への長距離越境大気汚染の評価において重要な位置にあるロシア東シベリア及び沿海州地域の大気環境を把握するため、平成17年度から3年間、東シベリア地域3地点及び沿海州地域1地点において、湿性沈着並びに大気中のガス状及び粒子状物質濃度についての通年観測、移流指標物質として環境試料中の鉛濃度、さらに鉛同位体比の測定も行った。
  東シベリア及び沿海州地域における降水中の主要な酸性成分は硫酸イオン、主要な塩基性成分は非海塩性カルシウムイオンとアンモニウムイオンであること、これらの湿性沈着量は東シベリア地域においては夏季に多く冬季に少ないという季節変動を示すこと、大気中の粒子状物質のうち、硫酸塩と硝酸塩については降水中とほぼ同様の濃度比を示したが、アンモニウム塩は粒子状物質中で、カルシウム塩は降水中で、より高い割合で検出されていることが確認された。また、東シベリア地域のモンディにおいては、降水量に比して湿性沈着量が少なく、ガス状及び粒子状物質の大気中濃度も低いことから、非常に清浄な地点であることがわかった。
  これらの観測結果及び解析手法は、長距離輸送モデル開発における検証データとしてあるいは東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)のデータ解析に有用であると考えられる。
  広域輸送モデルの相互比較と北部ユーラシアにおける大気汚染物質輸送のモデルシミュレーションに関する研究では、東アジア各国及び欧米の研究者によって開発されている東アジア規模での大気質や酸性雨を対象とした長距離輸送モデル間での硫黄化合物、窒素化合物及びオゾンなどを対象とした精度比較を実施してきた。これまで、8つのモデル研究機関の参加により、計算結果の相互比較や詳細な解析が進められ、その状況についてはオーストリアの国際応用システム分析研究所(IIASA)で毎年開催されるワークショップにおいて報告されてきた。平成19年度にはPhase IIプロジェクトにおいて得られた結果について、各研究者がそれぞれ9本の論文としてまとめて、雑誌に投稿した。また、IIASAにおけるワークショップも開催し、各々の研究の進捗状況の報告及び次期プロジェクト(Phase III)の内容についての検討が行われた。