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[キーワード] 酸性物質、黒色炭素、硫酸塩、長距離輸送、実時間分析

[C-051 アジア大陸からのエアロゾルとその前駆物質の輸送・変質プロセスの解明に関する研究]

(3)福江・沖縄・小笠原におけるエアロゾルの変動の観測と放射強制力の推定[PDF](1,624KB)

  独立行政法人産業技術総合研究所
  環境管理技術研究部門 地球環境評価研究グループ  


兼保直樹

<研究協力者>

 

  千葉大学 環境リモートセンシング研究センター

高村民雄

  [平成17~19年度合計予算額] 10,379千円(うち、平成19年度予算額 3,164千円)

[要旨]

  アジア大陸からの汚染物質の輸送・変質およびその気候影響を評価するため、中国本土を含む広域観測の一部として、配置測点のなかで輸送経路の最も東端(風下)に位置する小笠原父島、および輸送経路上にある沖縄辺戸岬においてエアロゾルの地上観測を実施した。
  硫酸塩の実時間測定のために導入したSulfate Particulate Analyzer の出力値は、SO4 からSO2への変換率が不明のため、48時間捕集されたフィルターサンプルの分析値と比較することにより値付けした。2007年春季の集中観測(3~4月)では、SO4の輸送イベントが高い頻度で測定され、高い濃度(最大20 gm-3)かつ幅広(3日~)の輸送パターンがいくつか観測された。
  そのうち、4月9~12日の輸送イベントは、黒色炭素粒子に対してSO4濃度割合が高く、高気圧辺縁を廻ることで海上に長く滞留したためSO2酸化が進行した aged な気塊であると考えられる。一方、4月16~17日の高濃度イベントは、寒冷前線の通過による大陸からの速い輸送によるものであり、辺戸では黒色炭素粒子に対するSO4 濃度割合が7程度と低く、安定した割合を保ち、発生源地域での特徴を反映した状態での気塊が捉えられたと考えられる。この気塊が翌日には父島付近に到達するが、寒冷前線通過直後の黒色炭素粒子に対するSO4濃度割合は17程度と辺戸の2倍に増えており、SO2からの酸化による生成が検出された。
  さらに、辺戸においては、国立環境研究所によるエアロゾル質量分析計の運用に並行して低圧型インパクターにより主要エアロゾル成分の粒径分布を測定した。この結果、従来報告されている硫酸塩の粒径分布よりモード径の大きな分布が継続的に観測された。これはdroplet modeと呼ばれる雲過程を経た粒子に特有の粒径分布と類似しており、アジア・太平洋岸地域の硫酸塩エアロゾルの特徴である可能性がある。