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[キーワード]森林火災、延焼枯死林分、地表火延焼林分、ヤクーツク、カラマツ林

[B-053 ロシア北方林における炭素蓄積量と炭素固定速度推定に関する研究]

(3)森林火災による炭素蓄積量・炭素固定速度への影響[PDF](1,224KB)

  北海道大学低温科学研究所  

串田圭司

  [平成17~19年度合計予算額] 9,887千円(うち、平成19年度予算額 2,515千円)

[要旨]

  IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change: 気候変動に関する政府間パネル)第4次報告書によると、世界の原野・森林火災は、人為起源の二酸化炭素放出量(化石燃料の燃焼とセメント生産: 7.2 ± 0.3 Gt C yr-1)の20~60%の二酸化炭素を燃焼時に放出している。東シベリアの森林火災による炭素蓄積量・炭素固定速度への影響を評価するために、火災の前の二酸化炭素収支と火災の重度の地理的分布を、リモートセンシングにより評価した。シベリアのカラマツ林で、生物測定と二酸化炭素収支のパラメータに基づいて考察し、葉面積指数(LAI)と林床植被率(FVC)が純一次生産(NPP)の指標となることを示した。さらに、Landsat ETM+画像を用いて、これらの指標とそれに対応したNPPの地理的分布を得た。この見積りはカラマツ個葉と林床の分光測定と放射伝達モデル研究による。その結果、LAIとFVCは実測値と合っており、見積もったNPP(222 ± 24 g C m-2 yr-1)は、2000年から2006年の気象タワー観測と土壌呼吸観測によるNPP(130~280 g C m-2 yr-1)と整合していた。本研究では、LAI、FVC、年NPPの地理的分布を二酸化炭素収支と分光特性のパラメータと対応した形で示した。火災の重度については、「森林火災の延焼により枯死した林分」(延焼枯死林分)と「地表火のみの延焼で枯死していない林分」(地表火延焼林分)との2つに分ける。これらが、火災直後に、火災を受けていないカラマツやその他の植生から分離できるかどうかを調べた。その結果、30m地上分解能のLandsat ETM+の可視から短波長赤外のセンサーを用いた教師付き分類で区分できた。MODISの500mの地上分解能のセンサーの分光ミクセル解析により、1画素の面積率を3%-10%程度の変動係数で見積れた。ただし、広域の各カテゴリーの面積率の算出では誤差が蓄積される傾向がある。広域での2つの重度の火災地の面積率をより正確に算出するには、Landsat ETM+などのMODISより地上分解能の高い画像を参照画像として用いるべきことを示唆した。