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[キーワード] 対流圏衛星観測、二酸化窒素、 オゾン、検証、紫外可視分光計
[B-051 アジアにおけるオゾン・ブラックカーボンの空間的・時間的変動と気候影響に関する研究 ]
(2)対流圏化学衛星データによるオゾン及び前駆体物質の空間的・時間的変動の解析
[PDF](1,815KB)
1)アジアにおけるオゾン及び前駆体物質の解析
2)衛星観測データによる対流圏微量成分濃度導出の高度化
独立行政法人海洋研究開発機構
地球環境フロンティア研究センター
入江仁士・金谷有剛
奈良女子大学理学部情報科学科
林田佐智子
<研究協力者>
奈良女子大学理学部情報科学科
野口克行・久慈誠
國學院大學文学部自然科学研究室
柴崎和夫
[平成17~19年度合計予算額] 23,639千円(うち、平成19年度予算額 6,475千円)
[要旨]
急速なエネルギー需要の増大によって大気汚染が深刻化している東アジア(特に中国・華北平原)において、対流圏中のオゾン及びその前駆気体(NOxやVOC等)の空間的・時間的変動を定量的に理解することは急務である。その為には衛星を使って対流圏中の化学微量成分を地球規模で観測することが非常に有効であるが、東アジアの汚染地域では衛星データの検証に不可欠な独立観測は皆無に等しく、広域大気汚染の実態の定量的理解を困難にさせている。こういった問題を克服するために、本研究では衛星データの検証に最適な地上設置型の紫外可視分光計(MAX-DOAS)を開発するとともに、必要な解析ソフトウェア(非線形最小二乗法を用いたスペクトルフィッティング法・モンテカルロ法を用いた放射伝達モデル)も開発し、平成18年6月に世界で初めて中国・華北平原での観測を実施した。観測は本プロジェクト・サブテーマ1の中国泰山集中観測の枠組みの中で実現された。国際協力の下で整備した対流圏NO2カラム濃度の衛星データと比較したところ、衛星データには系統的に約20%の正のバイアスがあることが分かった。他方、これまで衛星から長期にわたって観測された対流圏NO2カラム濃度データを解析したところ、その季節変動・年々変動パターンは領域モデルで定性的に良く再現されることが分かった。また、対流圏オゾンのカラム濃度についても衛星データとオゾンゾンデデータを比較し、衛星データに約10%の正のバイアスがあることが分かった。これらの成果により、今後は衛星データとモデルの比較結果を定量的に解釈できるようになるなど、モデルを精密に検証する上で不可欠な科学的基盤を築くことができた。オゾンについてはさらに、オゾンゾンデデータの長期データも併せて解析し、札幌・つくば・鹿児島では対流圏オゾン濃度の増加速度が近年鈍化している一方で、那覇では2000年以降、高濃度イベントが頻繁に観測されたことが分かった。