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[キーワード] 海岸侵食、土地所有、地形発達、都市化、植生変化

[B-15 環礁州島からなる島嶼国の持続可能な国土の維持に関する研究 ]

(2)環礁州島の人間居住-自然環境の相互作用に関する研究

1)環礁州島の地形発達史と人間居住に関する研究[PDF](294KB)

  帝京平成大学 

近森 正

  [平成15~19年度合計予算額] 6,212千円(うち、平成19年度予算額 0千円)

[要旨]

  環礁の州島は動態的な地形である。伝統的な環礁の集落は変動性の大きな地形に成立し、その生活は環境の変化に対応して動的均衡を保ちながら展開した。安定的な居住を可能にした州島の形態を地形発達過程と考古学的調査の結果にもとづいて明らかにした。その結果にもとづいて環境変動に対応した居住地の選定を提示した。
  人間の居住空間に組み入れられた環礁の植生は社会的、文化的、経済的要因によって急激な変更をうける。先史ポリネシア人は自らの移動に際してさまざまな有用植物を導入し、自生種を組み合わせながら植物社会を豊富化した。とくに広汎な適応性をもつココヤシを広く栽培して、多層的な植物の管理と利用をおこない、持続的なアグロフォレストリーを確立したことは環礁における生計生産の最も大きな特色である。このシステムは近代になってからはコプラ生産と結びつきながら維持されてきたが、1980年代以降、世界市場の変化のなかで衰退した。それは植生の荒廃を招いただけではなく、島の人々の環境知識を奪い、海浜植生による海岸線の保全効果を失わせた。脆弱化した州島の自然は脆弱化した社会文化システムと一体であって、単なる工学的な対応だけでは、持続的な保全にはならない。これらにもとづいた対応策を提示した。
  ツバル・フナフチ環礁フォンガファレ島は太平洋戦争における軍事基地化によって、未発達な州島地形が著しい改変をうけた。引き続き、急激な都市化によって伝統的な社会秩序が崩壊し、過剰人口や市場経済によって土地運用の混乱が起こった。硬直化した都市形態が環境変動によって著しく脆弱化していることを検討し、環礁州島における持続的な生存の可能性を提示した。