[キーワード]貿易と環境、産業連関分析、二酸化炭素、土地資源、エコロジカル・フットプリント
[H-9 物質フローモデルに基づく持続可能な生産・消費の達成度評価手法に関する研究]
(3)物質フローの国際連関と国際比較分析に関する研究[PDF](1,984KB)
名古屋大学大学院環境学研究科 |
井村秀文・奥田隆明・白川博章・田畑智博 |
広島大学大学院国際協力研究科 |
金子慎治・市橋 勝 |
同志社大学経済学部 |
和田喜彦・岸基史 |
[平成16~18年度合計予算額] 22,742千円(うち、平成18年度予算額 6,941千円)
[要旨]
経済のグローバル化に伴い、貿易取引を通じた環境負荷の国際的相互依存関係が強まっている。環境負荷の大きな生産活動を国外に移転することにより自国内での見かけ上の環境負荷を小さく抑える国がある一方、環境負荷の大きな工業製品を生産し、これを輸出することにより高い経済成長を遂げる国もある。このことは、財・サービスの生産・流通・消費の過程で直接的・間接的に発生した環境負荷を、生産国と消費国のいずれに帰属させるかによって、環境保全の責任について異なる見解が生まれることを意味し、持続可能な生産・消費達成度を評価する上での重要な視点となる。そこで国間、地域間、都市間といった様々なスケールでの経済と環境負荷の相互依存関係を明らかにするとともに、その結果をどのように政策に利用するかを検討する必要がある。
本研究では、まず、アジア経済研究所から刊行されている国際アジア産業連関表を用いて日本、米国、中国、東南アジア諸国における経済と環境負荷の相互依存関係について分析した。その結果、1985年から2000年の15年の間に、日米関係を中心に形成されていた貿易と環境負荷の相互依存関係が大きく変化し、中国の存在が目覚しく増大したことが示された。さらに、経済活動の中心は都市であるため北京と東京を対象として、経済と環境負荷の相互依存関係を詳しく検討した。
次に、急速な経済成長を遂げている中国を対象とし、エコロジカル・フットプリント(EF)指標を用いて、地域間の経済と環境負荷の相互依存関係、および農業における土地生産性の向上と環境負荷の関係を検討した。分析の結果、沿岸部ほど他地域の資源への依存度が大きいこと、CO2の排出量はどの地域でも森林の吸収力を大幅に上回っていること、土地の間接的使用も含めると1985年から2003にかけて農業の土地生産性はむしろ低下していることなどが明らかになった。
最後に、EF指標に焦点を当て、欧州・豪州等の国家、地方自治体、環境NGO、民間企業等におけるEF指標の活用に向けての経緯と成否の要因についての分析・検討を行った。