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[キーワード](地球)温暖化、共通だが差異ある責任原則、汚染者負担原則、原因者負担原則、予防原則

[H-7 中長期的な地球温暖化防止の国際制度を規律する法原則に関する研究]

(1)地球温暖化防止に関連する国際法原則の内容と射程に関する検討[PDF](683KB)

  明治学院大学

磯崎 博司

  海上保安大学校

鶴田 順

  独立行政法人国立環境研究所

久保田 泉

  龍谷大学

高村 ゆかり

  財団法人 地球環境戦略機関

遠井 朗子

  [平成16~18年度合計予算額]  22,585千円(うち、平成18年度予算額 7,702千円)

[要旨]

  国際社会が合意を積み重ねてきた法原則に基づいて中長期的な国際制度のあり方を検討することは、国家の合意可能性を高め、環境上の有効性という条件を満たす制度の構築という観点から有効である。京都議定書に見るように、削減負担の配分だけではなく、京都メカニズム(市場メカニズム)や遵守制度、資金供与・技術移転、適応策など多数の制度要素から温暖化防止の制度は構成される。国連気候変動枠組条約3条が定める原則(衡平、共通だが差異ある責任原則(CBDR)、予防原則など)、温暖化防止の国際制度に関連するその他の原則(汚染者負担原則(PPP)、平等原則など)は、複数の制度要素の局面に関連し、反対に、複数の原則が機能する中でそれぞれの制度要素のあり方が規定されている。予防原則は、枠組条約2条の中長期目標の水準や設定の方法の議論において主として機能する。他方で、衡平CBDRなどの原則は、資金供与、技術移転なども含めた制度全体の設計のあり方を規定し、なかでも、国家間、とりわけ、先進国と途上国間の負担配分の局面で機能する。CBDRは、地球環境保護を全ての国家の責任としつつ、問題への寄与度や問題解決能力に応じて先進国はより重い責任を負うべきとする原則であるが、多国間交渉の中から生成し、国際協力の基礎を提供する役割を果たし、多数の条約に「差異化」の実行が広範に受け入れられている。他方で、各国国内法では確立した環境保全の分野の費用負担の配分原則であるPPPが地球環境問題の費用負担に適用されることは少なく、実効的な問題解決のための費用負担のあり方があらかじめ措定され、その正当化を図る一資源としてある特定の費用負担原則が動員されることが多い。しかし、途上国支援の必要性を承認しつつ、外部不経済の内部化と正義・公平の観点から、PPPは、温暖化の費用負担、とりわけ、適応費用の負担配分の基盤を構成しうると考えられる。PPPの国際レベルでの適用に対する国際社会の合意の範囲、費用負担のために必要な科学的知見の限界をふまえてさらに検討を進める必要がある。