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[キーワード]キツツキ、低地フタバガキ林、IUCNレッドリスト、森林保護区、指標種

[E-4 熱帯域におけるエコシステムマネージメントに関する研究]

(2)多様性評価のためのラピッドアセスメント開発に関する研究

③野生生物の多様性評価のためのラピッドアセスメント開発に関する研究[PDF](391KB)

  独立行政法人森林総合研究所
  生物圏科学研究領域・熱帯生態系保全研究室

奥田敏統
(現広島大学大学院総合科学研究科)

  EFフェロー
  (カナダBird/Land Ecosystem Management)


Kenneth Ross Parker

<研究協力者>

 

  独立行政法人森林総合研究所
  生物圏環境研究領域 熱帯生態系保全研究室

沼田真也・鈴木万里子
近藤俊明・Soo Woon Kuen

  財団法人自然環境研究センター

西村 千

  マレーシア工科大学

Mazlan Hashim, Abd. Latif Ibrahim

  [平成14~18年度合計予算額]  6,926千円(うち、平成18年度予算額 2,424千円)

[要旨]

  野鳥類や哺乳動物などの野生生物の潜在的な生息環境の状態を、植生環境の空間的構造などから推定するような簡易評価手法(ラピッドアセスメント)を開発し、生物多様性の状況を迅速かつ的確に把握できるような態勢を作ることを目的とし、マレーシア半島部のパソ保護林を対象に穴掘り鳥(キツツキと8種のゴシキドリ)の生態と森林構造との関係について調査を行った。その結果、穴掘り鳥の空けた空洞(ほら)(n = 70)のほとんどは立ち枯れ木(77%)でみられ、生木は23%に過ぎないことがわかった。直径の大きな立ち枯れ木、特にフタバガキ(平均胸高直径 = 57 cm)は手頃な分だけ穴掘りに好まれることがわかった。天然洞のサイズや形は狭い隙間のようなものから、大型のフクロウやサイチョウの生息に使えるような大きな穴まで様々であるが、空洞を利用する動物は森の健全度の重要な指標であり、東南アジアの低地熱帯雨林の保全と管理計画策定にあたっての重要な指標となることが示唆された。実際に天然林と再生二次林(択伐後40年経た老齢木が少なく森林構造が比較的単調な林相を呈する)とでサイチョウやキツツキの生息密度を比較したところ天然林に比べ再生二次林が低いことが分かった。
  一方で、マレーシア半島の森林に分布する鳥類に関する資料を収集し、レッドレリスト鳥類、それ以外の鳥類、およびIUCNのリスクリスト掲載鳥類のリスト毎に整理を行い、マレーシア半島部に残存する低地フタバガキ林並びに主調査地であるパソ保護林を対象に野生生物種の生息地としての特性を明らかにするとともに、その機能を維持するための森林構造について検討した。その結果、パソ保護林生態系のそのものの脆弱性や絶滅性が浮き彫りになった。