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[キーワード] 亜酸化窒素、化学輸送モデル、PDF解析、極渦崩壊、成層圏

[A-1 オゾン層破壊の長期変動要因の解析と将来予測に関する研究]

(4)オゾン層将来予測モデルを用いた北半球トレンドの解析に関する研究[PDF](1,131KB)

  独立行政法人国立環境研究所
  大気圏環境研究領域 大気物理研究室


秋吉英治

  独立行政法人国立環境研究所
  大気圏環境研究領域 大気物理研究室


Libo Zhou

  [平成17~18年度合計予算額] 1,951千円(うち、平成18年度予算額 951千円)

[要旨]

  下部成層圏における亜酸化窒素濃度の年々変動を、化学輸送モデルを用いて計算し、その結果をProbability Distribution Function (PDF)解析した。初年度に行ったNCEP/NCAR再解析データを化学輸送モデルにu-v-Tナッジングによって同化した計算に加えて、データの上限高度がより高いECMWF-ERA40を、温度同化を行わないu-vナッジングによって同化した計算を行った。1978年から2002年までの高度600K、45oN以北のN2O濃度の計算結果を解析したところ、極渦崩壊の早い年は、極渦崩壊時期にN2O濃度の急激な低下が起っていることがわかった。そして、夏までにはその最大面積を占める濃度がまた冬の時期の値まで増加・回復するという結果が得られた。極渦崩壊の遅い年には、極渦崩壊に伴うこのような急激な下部成層圏N2O濃度の低下は起こらず、最大面積を占める濃度は冬から夏までほぼ一定値を示す。そして、この極渦崩壊時期の早い年の45oN以北の領域のN2O濃度の低下の原因は、これらの年のより強い下降流の影響であることがわかった。ただし、極渦内だけを見た場合、極渦崩壊時期の早い年のN2O濃度は増加し、それには水平方向の輸送の影響が大きいことがわかった。
  また、化学気候モデルによって行われたオゾン層の将来予測実験(1980~2050年)の結果を使ってオゾンとN2O濃度の相関を調べた。高度600Kのオゾン濃度とN2O濃度の相関は極渦境界付近で大きく、その相関は年代によって変化していた。このことは、年代によってフロンによるオゾン化学の影響が異なることを示唆している。