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[H-11 京都議定書の目標達成に向けた各種施策(排出権取引、環境税、自主協定等)の効果実証に関する計量経済学的研]

(3)排出権制度の有効性に関する計量経済学的研究

上智大学経済学部

有村俊秀

 〈研究協力者〉  カナダ コンコーディア大学

今井晋

           アメリカ合衆国 フロリダ大学

Paul Sotkiewicz

           アメリカ合衆国 未来資源研究所

Dallas Burtraw

[平成14〜16年度合計予算額]

 平成l4〜16年度合計予算額 12,335千円
 (うち、平成16年度予算額 7,837千円)

[要旨]

  京都議定書での排出目標を遵守する方策として、排出権取引制度に対する関心が国内外
で高まっている。これにともない、排出権取引制度が実効性、経済効率性などの観点から望まし
い機能を発揮するために、どのように制度を設計すべきかについての検討が進められている。
 排出権取引制度のメリットは、二酸化炭素の排出量を確実に排出目標値に抑制しつつ、社会全
体の二酸化炭素削減費用を最小にできる点にある。しかし、現実には、企業の行動はさまざまな
政策(規制、補助金など)によって影響を受けるため、排出権制度がこのような望ましい機能を
発揮するとは限らない。
 本研究の目的は、アメリカのSO2排出承認証制度を対象に、それに基づいて、排出権取引が
企業行動に及ぼす影響を定量的に明らかにし、制度が効率的に機能するためにどのように制度設
計すべきかを検討することにある。
 本研究では、排出権制度が有効に機能しない要因について、アメリカのSO2承認証市場を対
象に定量的に分析した。この分析結果から、PUCの規制が電力会社に対して、承認証市場よりも燃
料転換、混合使用といった承認証取引を抑制する行動を選ばせるように促していることがわかっ
た。このことは、SO2削減の限界費用が高い発電所であっても、承認証市場を使用せずに、自
らがSO2を削減することになるため、SO2削減費用は社会全体で最小化されない。以上の分析か
ら、排出権市場が汚染物質削減費用最小化という望ましい機能を果たすためには、制度の立案と
同時に、汚染物質削減費用最小化を阻害するような規制、制度を修正することを検討することが
重要である。
 さらに、本サブテーマは、脱硫装置の設置やバンキングとうい動学的な意思決定まで含めた発
電所の動学離散選択モデルを構築し、分析を行った。その結果、バンキング制度による費用削減
分は1.62億ドルになることがわかった。つまり、バンキングによる費用節約削減効果は無視でき
ない規模であるが、同時に、その相対的大きさは、空間取引による節約効果に比べて小さいこと
も確認された。
 また、ボーナス承認証が、公害防除投資の早期投資を促進すること確認された。

[キーワード]

 京都議定書、排出権取引制度、SO2排出承認証制度、プロビットモデル、バンキング、離散動学モデル