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[D―1 陸域由来の環境負荷変動に対する東シナ海の物質循環応答に関する研究]
(2)東シナ海陸棚域の堆積物による過去50年間の長江経由土砂供給量の長期変動に関する研究
独立行政法人産業技術総合研究所
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地質情報研究部門 沿岸都市地質研究グループ
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斎藤文紀
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深部地質環境研究センター 地下環境機能チーム
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金井 豊
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長崎大学 水産学部沿岸環境学研究室
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〈研究協力者〉 中国 中国海洋大学
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楊 作升
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華東師範大学
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陳 中原
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[平成14〜16年度合計予算額]
平成l4〜16年度合計予算額 31,006千円
(うち、平成16年度予算額 10,200千円)
[要旨]
河川の堆積物運搬量の変動が沿岸海域に与える影響を明らかにするため、黄河と長江
において河川の土砂運搬量データ、海域の堆積物に記録された変動記録、海岸沿岸域の地形な
どの変動記録を総合的に解析することを試みた、
黄河では、ダムの堆砂や流域の水利用によって運搬土砂量が激減しており、1999年以降はデ
ルタ全域で海岸線が後退する状況となっている。1976年以降の海岸線変化と運搬土砂量との関
係から、年間運搬土砂量から2.5億トンを引いた値が陸域の拡大速度とよい相関があることから、
波浪による沿岸域における土砂の再移動量は年間2.5億トンと推量され、海岸線を維持するため
には同量の土砂供給が最低必要であることがわかった。
長江では、長江デルタのデルタフロントとプロデルタの海域から採取した柱状堆積物につい
て鉛210とセシウム137を用いて堆積速度の変化を検討した。水深14.5m、19.7m、26.8mから採取
したコアの鉛210法による表層付近の堆積速度は、柱状試料試料の下部の堆積速度よりも小さく、
またセシウム137法による堆積速度よりも小さかったことから、近年の堆積速度の減少が推定さ
れ、減少は沖合ほど明瞭であった、長江の河川から海域への土砂供給量は1980年代後半以降、
顕著に減少しており、2000年には1960-1980年代の供給量の約6割にまで低下している。このこ
とが堆積速度減少の原因と考えられ、特に沖合ほど減少が顕著であることは、沿岸域が潮汐卓
越環境であることを反映していると考えられる。プロデルタ・内側陸棚から採取した柱状試料
の堆積相も潮汐の影響を強く示しており、供給土砂の減少はより沖合の堆積作用に影響が出易
いことが明らかとなった。また長江中流の宜昌と下流の大通における土砂運搬量にはよい相関
があり、この関係から推定される三峡ダム建設後の海域への土砂量は、1960-1970年代の土砂量
の約半分、三峡ダムの貯水直前よりも1-2割減少することが示された。
[キーワード]
長江、黄河、土砂量、沿岸浸食、ダム