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[A−10 衛星データを利用したオゾン層変動の機構解明に関する研究]

(6)光化学ラグランジアンモデルと気球観測データを用いた極域成層圏化学に関する研究

独立行政法人国立環境研究所

 

 

  エコフロンティアフェロー

 

Emmanuel Riviere

  受入研究者:成層圏オゾン層変動研究プロジェクト衛星観測研究チーム

 

中島英彰

[平成13〜15年度合計予算額]

 平成l3〜15年度合計予算額 4,172千円
 (うち、平成15年度予算額 0千円)


[要旨]

 本研究は、極地方におけるオゾン破壊メカニズムの解明を目的としている。極成層圏雲
(Polar Stratospheric Clouds;PSC)は、不活性ハロゲン・リザーバー物質を、オゾンを破壊するラ
ジカルに変換する事から、この極域でのオゾン破壊に決定的役割を果たしていると考えられてい
る。同時に、PSCは硝酸を含有する雲の粒子の沈降によって、成層圏における窒素酸化物の主
要なリザーバーであるHNO3を取り除くこと(脱硝)が判っている。現時点で、このPSCの役割
がはっきりと証明されたとしても、PSC形成過程の詳細は未だ不明な点が多い。オゾン層破壊の
発生を将来的にモデル等で正確に予測するためには、このPSC形成過程を正確に定量的に推定
することが重要である。そこで、ここでは我々が開発したPSCの生成・消滅の微物理過程を取り
込んだ光化学ラグランジアンモデルMiPLaSMOを用いた、衛星搭載分光計ILASによるHNO3
測結果との比較解析に主眼を置いた。これによって、PSCの形成と成長、さらにPSCの脱硝に対
する影響についての情報も、同様に取得することが可能になる。このため、ILASによる少なく
とも2回の観測空気塊の化学的特性の変化を、マッチ解析手法を用いて調べた。南北両半球でそ
れぞれ17ケースのマッチペアーについて解析を行った。その結果、PSCの形成にあたって使用
した気象データから得られた温度にバイアスのあるケースが存在すること、南極域でのPSCの
形成は、ほぼ現在考えられているシナリオで説明できそうなこと、北極域でのPSCの形成メカ
ニズムには、まだ不明な点が多いことなどが判った。また、南極域で、大粒径の硝酸三水和物粒
子からなるPSCの存在も示唆された。


[キーワード]

 極成層圏雲、脱硝、ラグランジアンモデル、マッチ解析手法、オゾン