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[D−2 有害化学物質による地球規模の海洋汚染評価手法の構築に関する研究]

(1)有機汚染物質による地球規模の海洋汚染評価手法の構築に関する研究


独立行政法人国立環境研究所

 化学環境研究領域

動態化学研究室

功刀正行・原島 省

東京大学大学院

大久保明、半戸里江


[合計予算額]

 平成12〜14年度合計予算額 93,762千円
 (うち、平成14年度予算額 29,117千円)

[要旨]

 有害化学物質による地球規模の海洋汚染評価に資する観測手段として、日本−ペルシャ湾および日本−オーストラリア間に就航する原材料輸送船に搭載する海洋汚染観測システムを新たに開発し、それぞれ同一海域における複数回の観測を実施することにより、観測システムの評価と改善を行った。原材料輸送船は、各輸送原材料によって構造などが異なるため、海運会社の協力および情報提供を受け、それぞれに対応した観測用採取ライン等を新たに設けた。初年度は、当該年度に進水を迎える油輸送船を対象とし、造船所において基礎設備工事を実施した。また、2年度は石炭運搬船を対象とし、定期ドッグ入りの際に同様な基礎設備工事を実施した。外洋海水中の極微量有害化学物質を観測するための船上での濃縮捕集には固相抽出法を採用した。固相抽出剤としては我々が推進費で開発したポリウレタンフォームを採用した。しかし、初年度の観測の結果、極低濃度の外洋海水では十分な回収率が得られない物質があることが明らかになったため、活性炭素繊維フィルターとポリウレタンフォームとの複合固相抽出剤を開発した。各航路とも、それぞれ往復数十日と長期の航海であるため、全ての観測を研究者が行うことは難しい。当初、海洋汚染観測システムは可能な限り自動化を行う予定であったが、間欠的な運用であること、航路および季節により最適観測条件が異なること、トラブル時対応が難しいこと、さらに船側の協力を得られたことなどから、自動化は最低限とし、乗組員に観測および試料捕集作業を依頼することとした。可能な範囲で乗組員に試料採取作業を代行してもらうために操作マニュアルを作成し、初回我々が乗船観測を実施するとともに操作手順を教え、以後観測を依頼した。概ね順調に観測は実施できたが、偶発的なトラブルにより一時的に観測できない場合があり、帰港時に対応したが、支援態勢を含めた検討が必要である。さらに広汎な化学物質を対象にするために、近年注目されているアルキルフェノール類およびビスフェノール類に関して同一捕集法での観測の可能性を検討した結果、ある程度の傾向は把握できるものの回収率およびコンタミネーションに関してさらなる配慮が必要であることが明らかになった。


[キーワード]

 有害化学物質、難分解性有機汚染物質、固相抽出、篤志観測船、ノニルフェノール