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[IR−2 温室効果ガスインベントリーシステム構築の方法論に関する研究]

(4)陸域生態系におけるCH4、N2O等のインベントリーシステム構築手法の高度化


独立行政法人農業環境技術研究所

 

地球環境部温室効果ガスチーム

鶴田治雄


[平成11〜13年度合計予算額]

 平成11〜13年度合計予算額 14,706千円
 (うち、平成13年度予算額 4,650千円)

[要旨]

温室効果ガスのインベントリーシステム構築手法の高度化を目的として、日本およびアジアで実施されてきた調査研究をもとに、農耕地を中心とした陸域生態系からのCH4、N2Oの発生量推定と発生要因を検討し、あらたに、つぎのことが明らかになった。(1)日本の農耕地からのN2OとNOのおもな発生要因は、土壌タイプ、投入窒素の質と量、投入方法、土壌水分量であることがわかった。(2)日本の農耕地からのN2O発生量推定について、作目別に栽培面積、投入窒素量、N2O発生割合から求める手法を開発し、それから、畑地と水田からの発生量は7.83GgN/年と推定された。しかし、その不確実性は大きいので、今後も圃場での調査研究が必要である。(3)水田からの水稲栽培期間中のCH4発生は、これまでに明らかにされた有機物管理、水管理、品種などだけでなく、土壌タイプ、栽培様式、水稲非栽培期間中の圃場管理………麦などの栽培の有無や土壌水分量など……によって、大きく影響を受けることが明らかになった。(4)水田からは、CH4だけでなくN20も発生すること、その原因は、投入窒素肥料だけでなく、冬期の水稲非栽培期間中の圃場管理などであること、また、N20とCH4の発生はトレードオフの関係にあることが、明らかになったので、水田からのインベントリーでは、CH4とN20を同時に考慮する必要がある。(5)日本の森林土壌によるCH4吸収量は、水田からの発生量の最大85%であることが推定され、森林土壌からのN2O発生量も、少なくとも一部の地域で農耕地からの発生量に匹敵することが明らかになった。これらから、森林土壌からのCH4、N2Oの発生に関する調査研究の重要性が明らかになり、今後、さらに研究を強く進める必要がある。(6)インドネシアの泥炭湿地からのCH4発生量は、他の熱帯地域よりも非常に少ないことがわかった。これから、熱帯アジアの泥炭湿地からの温室効果ガスの発生要因に関する研究をさらに進める必要がある。(7)日本の稲わらや麦わらなどのバイオマス燃焼で発生する温室効果ガスに関する調査研究によれば、IPCCの排出係数と大きく異なると推測され、これらの結果をもとに、アジアに適用できる排出係数を作成する必要がある。(8)日本で実施してきたN2Oの間接発生量の調査によれば、IPCCの排出係数は大きすぎると推測されたが、さらに詳細な調査研究が必要である。


[キーワード]

 農耕地、森林、メタン、亜酸化窒素、排出量推定手法