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[E−1 熱帯林の持続的管理の最適化に関する研究]

(5)環境インパクトの少ない木材搬出手法に関する調査研究


独立行政法人森林総合研究所

 

北海道支所(元独立行政法人国際農林水産業研究センター林業部)

佐々木尚三

林業機械研究領域造林機械研究室

遠藤利明・山田健

独立行政法人国際農林水産業研究センター

 

林業部(元独立行政法人森林総合研究所森林環境部)

野口正二


[平成11〜13年度合計予算額]

 平成ll〜13年度合計予算額 16,331千円
 (うち、平成13年度予算額 5,187千円)

[要旨]

 本サブテーマでは、環境への影響の小さい熱帯天然林木材搬出技術を開発するための基礎データとして、集材路の作設間題と、土砂流出や表土劣化、植生回復などの因果関係を明らかにしようとするものである。調査対象地として1999年12月〜2000年4月に伐採の行われた半島マレーシア・セランゴール州・ブキタレ水文試験地を選定し、作業道・集材路の建設時の土砂流出要因(切取り土工量と路側に堆積している土砂量)、集材終了後の路面からの浸食(路面浸食量・土砂が流出する位置、浸食流路と渓流との連結状態)さらに2年後の路面植生の回復状況を測定・調査した。
 結果は、1)ブロックC3内の作業道の長さは529.5m、路面の総面積は2067,8m2であった。また、集材路総土工量は、5162.3m3であり、1m当たりの平均値は7.61m3と、路面浸食と比較して膨大な値となる。路側に堆積された土量は、切取り法面側が374.2m3、盛側斜面には2131.2m3、合計2505.3m3となった。この結果は、集材路の作設に伴って発生した大量の不安定土砂のうち半量は、すでに渓流に流出していることを示唆している。2)集材作業終了後の路面浸食を、浸食跡(リル・ガリー)のサイズによって推定した結果、作業道27.3m3・ブルドーザ集材路上では43.9m3であった。この区間内に25カ所の流出地点(ノード)が観測され、そのうち20カ所からは土砂の流出が渓流まで直接つながっているのが見られた。集材路の路面傾斜と浸食量の関係は認められないが、斜面長さ・受水面の大きさと、浸食量には相関関係が認められた。3)車両の踏圧により土壌の締固めは、特に土場、作業道、幹線集材路で顕著であり、各切土の深さ10cmでは密度が2〜2.5となっていて、限界近くまで締固められていると考えられた。そこでの気層容積はゼロに近いと考えられる。4)ブルドーザ集材路の作業後2年の植生回復状況は場所によって極端に違いが生じているが、植生による被覆30%以下の場所が、半分の距離を占めている。路面の斜面長さと植生被覆には相関関係が認められ、斜面が長い場所での植生回復は進んでいない。
 これらの結果から、集運材作業道の計画設計においては、連続した長い登りなどや斜面をさける、路面に集まる集水面積を小さくするなど、特に路面上に地表水流が集まらないような配慮が求められ、伐採終了後は路面表面流による浸食を止めることによって、植生を回復させるような管理が必要であること、また切取り土砂を安定させ、流出ノード近くに不安定土砂を集積させないような作設工事が必要であること、が明らかになった。


[キーワード]

 熱帯林、集材インパクト、集材路、土砂流出、路面浸食