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[C−4 酸性・酸化性物質に係る陸域生態系の衰退現象の定量的解析に関する研究]

(5)キャッチメント・モデル解析手法の開発と総合評価


独立行政法人農業環境技術研究所

 

 地球環境部 生態システム研究グループ

新藤純子・麓多門・大浦典子

北海道大学大学院農学研究科

波多野隆介・永田修

信州大学理学部

戸田任重


[平成11〜13年度合計予算額]

 平成11〜13年度合計予算額 24,983千円
 (うち、平成13年度予算額 7,983千円)

[要旨]

奥日光の外山沢集水域(前白根と弓張峠)、茨城県観音台と八郷、北海道雨龍において物質循環調査を実施し、酸性雨による外部起源の酸性物質の負荷と、植物−土壌系における内部循環を評価し、地域による違いを明らかにした。また観音台と八郷および岐阜県の高山で、窒素の除去・負荷実験を行い、窒素負荷量の増減が土壌−植物系の物質循環に与える影響を検討した。森林衰退地である前白根南斜面に残った樹木は現在成長を続けており、単位面積当たりの窒素の樹体への正味蓄積速度は弓張峠の7、8割に達していた。しかし塩基は不足しており、塩基吸収が供給量により制限されていると考えられた。弓張峠、観音台、八郷では植物−土壌系における内部循環量が大きく、これによるプロトンの収支は、外部起源の酸の負荷と比べて大きい。一方前白根と雨龍では内部循環量が小さいため外部起源の酸の寄与が相対的に大きく、酸性物質負荷の変化の影響が現れやすいと考えられた。キャッチメントモデルを奥日光の集水域に適用してモデルの適用性を検討したところ、前白根と弓張峠では沈着したNH4+の硝化、植物による吸収、および有機態窒素の無機化と硝化が窒素と塩基の循環に大きな影響を与えていると考えられ、これらの過程のモデルをより適切なものに改良することが必要である。
観音台と八郷における1年間の窒素の除去、負荷処理は土壌溶液の濃度やN/sub>O発生量に有意な影響を与えなかった。温暖多湿な両調査地では、内部循環起源の窒素の供給量が大きく、外部から加えられた窒素も活性の高い植物や微生物により利用されていると考えられた。一方、高山では人工的な窒素負荷により1年目から濃度の上昇が見られ、2、3年目には土壌層からの顕著な硝酸流出を引き起こし、特に針葉樹林で変化が著しかった。内部循環の大きさの違いが窒素負荷に対する応答の違いと関連していると推測された。


[キーワード]

 酸性雨、物質循環、プロトン収支、キャッチメントモデル、亜酸化窒素