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[C−4 酸性・酸化性物質に係る陸域生態系の衰退現象の定量的解析に関する研究]

(4)酸性降下物の陸水環境に及ぼす影響の定量的評価


東京農工大学大学院農学研究科

 

小倉紀雄・飯泉佳子・
横山英也

独立行政法人 農業環境技術研究所

地球環境部

 

生態システム研究グループ

 

斎藤元也

生態システム研究グループ

物質循環研究チーム

新藤純子


[平成11〜13年度合計予算額]

 平成11〜13年度合計予算額 49,032千円
 (うち、平成13年度予算額 14,797千円)

[要旨]

 外山沢の渓流水と地下水では冬期問(12月−2月)にNa+、Ca2+のイオン濃度に変化が見られた。Na+、Ca2+は冬期間にイオン濃度が上昇し融雪後に減少し元の濃度に達した。イオン濃度の変化は流域全体が積雪によって覆われ水の地下への浸透が無くなり、中間流出が減少した事により、土壌や岩石由来のイオン成分であるNa+、Ca2+が十分に溶出した基底流出の流出割合が増加したためにそれらの成分の濃度が上昇した。融雪初期のアシッドショックの観測は出来なかったが、それに引き続いて起こる、流域を覆っていた積雪の一時期の流出に伴う地中由来のイオン濃度の減少が確認された。融雪期のイオン濃度の減少は五色沢でも確認された。
 外山沢・五色沢どちらの沢においても冬期間を除くと流量とイオン濃度に明確な関係性が見られなかった。
 2001年9月の結果は、調査1週間前の台風15号によるこの地域の891mmにおよぶ積算雨量の影響により、外山沢・五色沢ともに地中由来のイオン成分の濃度減少が多くの地点で見られた。
 渓流水・地下水中のCl-はほぼ大気由来であると考えられるため、SO42-、NO3-について考察するためにSO42-/Cl-比、NO3/Cl-比(当量比)を用い降水の値との比較を行った。SO42-/Cl比は外山沢では降水に近い値を示したが五色沢では降水の値と比較して非常に高い値を示した。また五色沢ではECが高いことからもSO42-の由来は火山活動の影響であると考えられた。NO3-/Cl-比は五色沢で降水に近い値を示した。外山沢では、特に地下水で、降水よりも高い値を示した。また、土壌の水抽出液においても降水に比べ高い値を示した。NO3-はECも低く火山活動の地下からの影響は考え難いため、外山沢流域においては降下物由来のNO3-の付加が考えられた。


[キーワード]

 渓流水、地下水、窒素飽和、NO3-、SO42-