検索画面に戻る Go Research



(3.7Mb)

[B−11 地球温暖化による生物圏の脆弱性の評価に関する研究]

(4)農業生態系の脆弱性に関する研究


農林水産省独立行政法人農業環境技術研究所

 

 地球環境部

林 陽生

 地球環境部気象研究グループ気候資源ユニット

鳥谷 均・石郷岡康史・後藤慎吉

 地球環境部気象研究グループ大気保全研究室

井上 聡

 地球環境部食糧生産予測チーム

横沢正幸・西森基貴

 生物環境安全部昆虫グループ個体群動態ユニット

山村光司・田中幸一

 企画調整部

清野 豁

宮崎公立大学

内嶋善兵衛

京都大学農学研究科

堀江 武・中川博視


[平成11〜13年度合計予算額]

 平成ll〜13年度合計予算額 29,599千円
 (うち、平成13年度予算額 9,291千円)

[要旨]

地球規模の温暖化は、農業生態系に大きな影響を及ぼすことが考えられる。特に近年、温暖化の予測研究の基盤となる技術開発が進み、従来に増して精度の高い影響評価の研究がスタートした。日本周辺の温暖化の規模は、地球上でも最も大きいことが指摘された。本研究では、グリッド間隔10kmの詳細なメッシュサイズの温暖化シナリオ(気候変化メッシュデータ/日本)を準備しこれを用いて、水稲の潜在収量への影響、害虫の世代数への影響、水稲の高温不稔にあたえる影響、積雪量変化が水稲栽培へ及ぼすの影響、さらに日本含む東アジアの農業気候資源と植物生産力への気候変化の影響に対して適用した。その結果、温暖化条件で収量を高く維持するために最適な栽培期間が選択された場合でも、全国平均でみた収量は減少することが明らかになった。原因としてイネの高温不稔が考えられるが、この点に関して実験的研究を行い、特定の生育ステージにおいて高温と高二酸化炭素濃度条件とが干渉し、イネの生育に影響することを明らかにした。この一方、水稲害虫の世代数も増大することから、温暖化時における世代数の地理的分布を予測した。また、温暖化が進行すると、降積雪量の減少および早期の融雪が起こると予測され、河川流量の変化が起こり必要な時期に水資源が逼迫する可能性を指摘した。温暖化時における東アジア気候の比較的長期的な予測から、暖かさの指数が現在の位置より数百キロ北へ移動すること、日本周辺では潜在的純一次生産量が平年の約70%まで変化する可能性を指摘した。最後に、日本の水稲栽培への影響評価のため、脆弱性マップを作成し負の影響の地域を明らかにした。


[キーワード]

 温暖化シナリオ、脆弱性、農業生態系、影響評価、水稲栽培