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[B−8 大気の酸化能と温室効果ガスの消滅過程をコントロールする反応性大気微量気体の大気質へのインパクトに関する研究]

(2)NOy、オゾン、エアロゾル等の離島における地上観測研究

高影響領域と気団交代領域における地上観測研究


独立行政法人国立環境研究所

 

 大気圏環境研究領域 大気反応研究室

畠山史郎・酒巻史郎

大阪府立大学大学院工学研究科

 

 機能物質科学分野 環境物質科学研究グループ

坂東 博


[平成11〜13年度合計予算額]

 平成11〜13年度合計予算額 22,268千円
 (うち、平成13年度予算額 7,500千円)

[要旨]

 東アジア大陸の縁辺地域は大陸性気団と海洋性気団の影響を交互に受け、大陸からの吹き出し流による汚染が懸念される地域である。本研究では、日本海の隠岐島及び東シナ海と太平洋を分ける沖縄本島において、大気の酸化能や温室効果ガスの寿命をコントロールする含窒素酸化物や炭化水素類などの大気中の反応性微量気体の連続観測を実施し、これら微量気体の動態解明を行った。
 含窒素酸化物のうち、パーアセチルナイトレート(PAN)や有機硝酸エステル類は本来、汚染・発生源のない清浄地域まで窒素酸化物を輸送する担体化合物である。したがって、東アジア大陸からの窒素酸化物汚染が大陸縁辺地域及び太平洋全域に及ぼす影響を把握するための重要な指標物質であり、また地球規模での光化学オゾン生成の前駆物質として対流圏大気化学反応の中で重要な役割を果たす物質でもある。そのため、本研究ではPANの動態把握のために、その自動濃縮・分析システムを製作し、隠岐島で連続測定を試みた。また、窒素酸化物と同様に、対流圏大気化学反応を促進させる役目があり、大気の人為汚染質の指標物質でもある炭化水素類の動態把握のために、沖縄本島最北端の辺戸岬近傍で大気を自動連続採取し、炭化水素類の測定を行った。
 隠岐島で測定したPANの日内変動を調べた結果では、有意な濃度変動は認められなかった。発生源近傍でおこる都市型光化学スモッグ現象においては、光化学反応が進行した午後に極大となる日内変化を示すが、隠岐島での測定では濃度変動が認められなかったことから、隠岐で測定されているPANはその場で生成したものでなく、発生源近傍で生成したPANが大陸から長距離輸送されてきた結果であると推定した。
 北西風の卓越する12月から4月にかけてのPANの月平均濃度は約20〜30pptで、変動幅も5から15pptと相当小さかった。このことは北〜北西方面のアジア大陸北部の比較的人為汚染の少ない大気が冬場の隠岐に支配的に入ってきていることを示唆していると思われるが、突発的に100pptを越えるPANが測定されることもあり、アジア大陸中緯度の汚染大気も流入してくることが推測された。なお、この高濃度の観測時は、これまでの飛行機観測で観測された日本海上空での高濃度PANの測定時と同様な大気の動態状況であったと思われた。
 沖縄本島辺戸岬における軽炭化水素類の連続測定結果から、これらは夏季に低濃度になり、冬季に高濃度となる季節変動を示すことがわかった。流入大気の後方流跡線解析から夏場には太平洋中央部からの海洋性大気の流入が支配的であり、冬場は西北からの大陸性大気の流入が支配的であることがわかった。この季節による流入大気の違いと、大気の光化学活性の違いによる炭化水素類の大気中寿命の違いが、このような夏に低く、冬に高い季節変動の原因であると推定した。このような大きな季節変動だけでなく、同一季節においても気団の入れ替わりによる数日程度の濃度の周期的な変動も観察された。また、炭化水素類が高濃度を示す大陸性大気が流入したときには、同時に測定しているオゾン濃度も同期して高濃度を示していた。このことから、反応性気体濃度の高い大陸性大気は酸化能も大きく、結果としてオゾン生成能も大きくなっていることがこの観測から裏付けられた。


[キーワード]

 PAN、炭化水素、オゾン、長距離輸送、大気酸化能